【無視される虫とともに】

 バナナは高いところで喰うと美味い。猿だった時代の記憶が蘇るからである。そこで毎朝のバナナ1本は2階のベランダで喰うことにしている。

 そこから見える景観に季節感がある。今はタラノキヤコシアブラの花が満開である。いずれもヤブガラシの花に似た、美しいとはいえないクリーム色の花なのだが、虫たちにとっては御花畑であるらしい。いつも誰かが飛び回っている。蜂や蠅、そして蚊やアブなどまでが活力源としているのだろう。何だか功徳を施しているような気分になる。

 地表からは見えない、虫たちの夏である。

【プーチン大笑い】

 さて、アラスカの島で米露首脳の会談があった。トランプに期待していた手柄がなかったことは表情から見てとれる。背中を丸め、両手を握った姿勢での、唇をつき出した伏し目がちの表情である。爺さんに怒られている子どものような爺さん、といってもいい。

 対するプーチンは上機嫌である。両手を振りかざし、笑顔で記者に答える。それはそうだろう。ICCから戦争犯罪人として手配されているのに、アメリカ領土で歓待された。指名手配は有名無実となった。それだけでも成果である。

 トランプは、ウクライナ侵略に対する非難もしなかった。侵略を容認したも同然である。今占領している地域ののうち、どれだけを確実なものにするかは、今後の交渉次第だが、獲物なし事態はなくなった。即時停戦の要請もなきものとしたので、その気になるまでは何年でも、ウクライナ市民を攻撃し続けるだけである。

【トランプの渋面】

 8月15日の会談設定は、米露両国の対日戦争勝利を掲げるためなのかと思った。あの時のように、歴史的な成果を出そうぜという表明である。

 しかしトランプに、そのような計算などなかったようである。計算する能力、そのための素材となる歴史的知識、政治的教養がないのだろう。あるのは不動産取引で身に付けたデールという強要のみである。しかしそれは、アメリカ国内で通用する内弁慶の力に過ぎない。プーチンのように冷徹な、悪意ある権威主義者に通用するものではない。

 この辺は、適当にあしらわれたシンゾー君と同様である。何も得ることなく、まんまと4島返還から2島返還に後退させられてしまった。町内のジャイアンは、町内支配に自分の能力を過信する。同じ町内のオバマ君がもらったノーベル賞がほしいなどといい出す。その過信そのものが、世界という広い世間では道化でしかない。せいぜいが、トランプビルの最上階でバナナでも食っているのがお似合いなのである。

 勝手に取引材料されたウクライナには、実にお気の毒としか言い様がない。