【ほぼスルー】
真珠湾である。新聞は少しだけ取り上げているが、電波メディアはほぼスルーである。未来は不確かであり、過去に学ぶことなどない。今で精一杯、ということなのだろう。14日の吉良邸討ち入りも同様の扱いを受けること間違いなしである。この調子でいつか、失われた30年が素っ気なく語られる日が来るのだろうか。
【日本の衰退因】
東洋経済on-lineで野口悠紀雄が『「マイナ保険証」に見た"日本の競争力低下"の理由』を論じている。日本の国際競争力低迷の原因に、デジタル競争力の低さがあるとするものである。その背景に政府のデジタル政策の迷走があり、「それを象徴するのがマイナ保険証だ」という。
デジタル庁の紙の保険証容認に、「マイナ保険証への転換は失敗に終わったと考えざるをえない。」とする。その上で、「マイナ保険証の利用が進まなかったのは…患者のためというよりは、マイナンバーカードの普及自体が目的だったと考えざるをえない」ところにあるとする。マイカによる印鑑証明取得を例に、「日本のデジタル政策には、そもそも方向性の選択の点で大きな誤りがあるとしか思えない。こうしたことが、デジタル競争力の低下に結び付いていくのであろう」と結語している。
【お役人様のお心のうち】
役人の思考とは次のようなものだったのだろう。
日本のデジタル化はアジアに遅れをとっている。よって、何が何でもマイカ利用を進めなければならない。そこで、マイナンバー制度を健康保険と結びつける。任意の制度であっても強制の制度を結びつければ、実質的に強制となり、普及率は一挙に向上する。
そこには、国民の利便のため、日本経済効率化のためなどという目的は皆目ない。あるのは役所が設定した数値目標を実現するということだけである。そのためなら、どのような詭弁でも用いる。保険料を払っている被保険者がマイカ不保時を理由に給付を受けられなくなる事態が生じても、政府に無縁、無責任だとするのである。
【引き下げられる公的扶助】
同じような詭弁を生活保護に関する報道にも見ることができる。(朝日新聞12/8)
厚労省が、物価を考慮して生活扶助費の給付水準を「これ以上引き下げられない」とするのに、財務省が『「物価」ではなく「消費」に着目して引き下げに向けて見直』すように働きかけている、というのだ。
低所得世帯が「19年から23年にかけて物価は5.6%増の一方、消費は1.6%増にとどまる」のだから、生活保護世帯への2.1%の特例加算は「合理的な算定根拠がない。」だから下げろ、というのだ。
厚労省は、「13年から15年にかけて、食費など生活費部分の保護基準額を下げた。全体で6.5%、最大10%という前例のない減額」を行っている。その根拠はデフレだった。08~11年の「総務省の消費者物価指数では2.35%だった。しかし厚労省は下落率を倍以上の4.78%と独自に算定し、引き下げの根拠とした」のである。
つまり、厚労省は物価下落を過大に見積もって給付を減らした。同じ理由で給付を増やさざるをえない事態になると、今度は財務省が物価ではなく消費支出を持ち出して減額を迫るのである。そこに、減額が生活保護世帯にどのような影響を与えるかの配慮は一切ない。予算配分を減らす数値目標のために、あらゆる根拠、理屈が駆使される。マイカ強制と同じ構図である。
このような目的と手段の混同こそ、日本経済低迷の原因なのではないか。国力を、どうでもいい方向に振り向けることになるからである。役人だけではない。経営者も同類である。剰余金を増やし、賃金を下げると言う数字上の功績を上げた人物が役員となり、ストックオプションを手にする。そのような虚構の中に安住しているのが今の日本なのである。国際競争力が落ちるのは必然と言わなければならない。