【非生産性を否定しない】
さて、公示日を迎え、選挙戦が本格開始となる。野党は裏金で攻め、与党は日本を守るとの標語で煙に巻こうとする構図となりそうである。いずれにしても生産的ではない。
くるまの移動中にはラジオを聴くことが多いのだが、先12日には日本記者クラブ討論会があった。そこで石破自民党総裁、石井公明党代表の示した方針は、裏金問題よりも当選可能性を優先させ、統一教会には触れない、というものであった。非生産的政治の極致である。
【狭隘な精神】
なかでも気になったのは石破の核に関する主張であった。ウクライナがロシアに戦略されたのは、核兵器を持たなかったからである、という論理である。
ロシアとウクライナは1994年12月に「ブダペスト覚書」を締結し、ソ連が配備していた大量の核兵器を撤去し、NPTにも加盟した。その代わりに、米露をはじめとする主要国はウクライナの主権尊重を言明した。かくして1966年5月31日、ウクライナから核兵器はなくなった。(読売新聞2022.8/29など)
この覚書に関して石破は、核を撤去したから侵略されることになったと繰り返した。核抑止力は有効であるといいたいのである。いかにも軍事オタクらしい戦術論に囚われた狭隘な精神である。
【武器を持っていれば安全とする幼児性】
武装すれば安全になるなどとは幻想であるとアメリカの銃による犯罪が証明している。同様に、ウクライナが侵略されたのは、核兵器を持たないからではない。それが正しいのであれば、ベラルーシやカザフスタンをはじめとする周辺国はおしなべて侵略されることになる。しかしそうはなっていない。
プーチンの侵略の論理は核反撃があるかどうかではない。核が使えない兵器であり、使えば破滅することを最も知っているのがプーチンである。死なば諸共のハルマゲドン事態となるまで使わない。
侵略は、相手国政権が抵抗しないと判断した時である。2014年のクリミア侵略の際の、英米をはじめとする西欧諸国の及び腰で確信を高めた。しかしウクライナ国民は反発し、2019年にゼレンスキーを登場せしめた。彼とて、それまでの親ソ政権同様にちょっと脅せばロシアの権威にひれ伏す。両軍衝突となる前に決着すると、判断を誤ったのだ。ナポレオンやヒトラーのようにである。
これは中国の台湾統一にもいえることである。台湾が一致団結して抵抗し、米日をはじめとする周辺国が支援するようであれば、台湾に核がなくとも中国共産党の武力統一は不可能である。ロシア同様に世界の孤児となり、共産党専制の崩壊を招くだけである。
【核爆弾を抱えながら安眠できるか】
二つ目は、もし石破の論旨が正しいのであれば、金正日の核開発戦略もまた正しいということになる。核を持っていれば、韓国からも米中からも攻撃されない。さすがに偉大な首領様である、ということになってしまう。
同時に、自衛のために日本も核保有すべきだということになり、独自開発が許されないならアメリカのを使わせろ、ということになる。核共有論である。ここに、非核三原則は否定される。被爆国日本の核抑止依存は、核開発を押しとどめる論理を完全に失わしめことになる。それだけではない。日本の核に対する発信力は他国同水準にまでに低下する。愚の骨頂である。
不思議なのは、社民党以外その点に言及しなかったことである。軍事は表にならないという石破の言に、最も賛同しているのは実は野党の連中なのかもしれない。誰かから、「日本のためにそうせい」とでも言われているのだろうか。