【越南人との遭遇】

 夕方の散歩の時、原付の若い男に呼び止められた。ぎこちない日本語である。思わず身構えた。

 道に迷った上に、携帯の電源が切れたので貸してくれと言っているようだ。渡したら持ち逃げされる恐れがあるので、こちらで操作することにしたが、電話ではなく地図を見たいという。経路検索はやったことがないのでモタモタしてしまい、とうとう渡して使わせる羽目になった。するとあっという間に確認し、返してよこした。ひらがなに不自由はないらしい。

 国を聞くとベトナムだという。2、3度訪れたことがある。カメラを盗まれて警察署で被害届を出したことがある思い出深い国である。また、昨今は東山道において何かと話題のお国である。しかし、異国に来てその国の言語を用いスマホの機能に習熟している。ベトナム語ができず、スマホも持ち歩くだけの当方よりよほど優秀である。どういう生活をしているか不明だが、日本で安全に過ごし、目的を成就させて帰国して欲しいものである。

 ただ、あまりに話ができ過ぎているので不安が残る。このような事例ってあるのだろうか。警戒するのは恥ずかしいのだけれど。

【しょぼいGDP】

 さて、日本のGDPが年率換算で599兆円になったと報じられている。アベシンゾーが目指したGDP600兆円は4年遅れながら到達目前となった。ただし、来年中にインドに抜かれて世界5位になるとされている。去年ドイツに抜かれて4位になったばかりなのにである。そのうちに、成長率の高いメキシコ、ブラジル、インドネシアにまで抜かれるのではと推測する。GDPで幸福になるわけではないが、まさしく落日である。

【美しい国の落日】

 ドル換算の数値だから円安が作用してそうなっている。円安は異常金融緩和をやらかしたアベノミクスがもたらした。安倍政権直前の半値なのだから、ドル換算GDPは半分になる。アベノミクスがなかったら、中国に及びもないが、ドイツに抜かれることなどなく世界3位のままだったはずである。日本の落日は『美しい国』を標榜した人物によってもたらされた。

【足らない賃上げ】

 岸田内閣においてはマイナス成長である。

 「内閣府が16日に発表した2024年1~3月期の国内総生産(GDP)1次速報は、物価変動の影響をのぞいた実質(季節調整値)で直前の四半期(昨年10~12月期)より0・5%減った。2四半期ぶりのマイナス成長で、この状態が1年続いた場合の年率換算では2・0%減となった。」(朝日新聞2024.5/17)

 政府は特殊要因であると言い逃れようとしているらしいが、朝日新聞はマイナス0・7%となった個人消費を持ち出している。賃上げ不足が原因と言いたいのである。主因は、中小企業や非正規労働者の賃金停滞だと思うのだが、何を慮ってか中高年の冷遇を指摘している。企業は史上空前の利益である。袖がないわけではない。

【株高でGDPマイナス】

 朝日新聞の見出は「株高なのにGDPマイナス」である。株高と経済成長に関連があるかのような書き方だが、本文にその因果関係の言及はない。あるわけがない。景気が良ければ株高になるが、株高が景気を良くすることにはならない。

 証券投資、特にNISAの主商品である投資信託は「貯蓄」である。国民は年金不足などの不安を煽られ、消費を節約して貯蓄に励む。特に今年は、政府が提唱するNISAに多くの所得が囲い込まれた。その作用で個人消費が縮小したのだから、GDPが停滞するのは当然である。その上、オルカンなどの海外投資が円安要因となり、GDPのドル換算値を押し下げた。「株高でGDPマイナス」となったのだ。

 それでも、貯蓄増によって国民生活が安定するならまだ許せる。しかしインフレは、貯蓄の価値を慢性的に損なっていく。万一にもアメリカ証券市場が崩壊すれば、オルカンといえども元本割れするおそれがある。貯蓄は消費されないまま消えていくのだ。何だか流行ってるようだからとNISAに飛びついた人達に、その覚悟はあるのだろうか。

【ダダ下がりの株価】

 世間は4万円だ、4万ドルだと囃し立てているが、このところの当方の持ち株評価はダダ下がりである。日経平均とは別次元で下がり続けている。実はそれが実態なのかもしれない。値下がり局面に移行しているとしたら、売り時を真剣に検討する局面となる。さあ、どうなるか。