【徒労の午後】

 昨日、税務署主催の3月決算法人に対する昨年度申告の説明会があった。会場までのこのこ出かけた。

 中身はというと、窓際に30年いて髪がすっかり抜けましたという感じの男性が、よく聞き取れない発声で、法人会のパンフレットを90分弱読み上げ流ものであった。予想通りの展開である。

【めんどくさい減税】

 今年の最大の変更は、定額減税である。源泉徴収から一人3万円減額するというあれである。所定額に達するまでの間、何ヶ月かにわたって処理する必要がある。その事務は重い企業負担となる。面倒かけて申し訳ありませんねとの解説があるのかと思ったら、別に講習会を開くのでそちらで確認しろ、で終わりである。

 まあ、当社は源泉徴収に無関係だからどうでもいいのだが、自民党のバラマキのつけを払わされる事務員は大変だなと、他人事ながらに同情する。

【もらえなかったお土産】

 中身がないことを予期しながらどうして参加したかというと、申告書の配付があるだろうと見込んだからだ。これまでは受付に、茶封筒に入った一式が準備されていた。

 実は昨年の申告時、来年からは申告書を送りませんと通告されていた。国税庁WEBからPDFをダウンロードして書き込めばいいかと軽く考えていたのだが、申告書はOCR処理するためにカラーなのであった。使用のモノクロレーザープリンターでは不備となるおそれがある。そこで、従来の既製申告書を入手する必要が生じ、申告説明会なのだから間違いなく配付されるだろうと踏んだのだ。

【無い、無い、ない】

 ところが、ない。配付しないとの説明も、ない。

 そこで、帰途に税務署に寄り道をした。これまで通りに、入口の長机に山積みにされているに違いない。

 ところが、ない。配付しないとの説明も、ない。

 仕方がないので、窓口で希望を伝えた。

 すると驚くことに、奥のレターケースからとり出スノである。多数の希望者を想定していないのだ。どうも、そのような圧倒的少数社になってしまったらしい。ぶっきらぼうに、ほらよという感じで手渡されたのも当然なのかも知れない。

【デジタル社会の非人情】

 これが行政のデジタル化、DXとやらなのだろう。しかし不思議なのは、その度にこちらの負担が増えていくことにある。対応する電子機器を準備し、アプリをダウンロードし、個別番号の割り振りをうけ、その上でデータを電子処理、送信しなけらばならない。国税庁は簡単だというが、切り替えるのは簡単ではない。

 似たような負担増は随所で見られる。JRの緑の窓口が縮小され、パソコン予約した上で発券機処理が必要になった。スーパーやコンビニでは、多様な自動レジが求められる。そうすることで事業者は経費が節減され、人件費削減が可能になるのだろう。国税庁も、すべて電子化すれば税金が勝手に振り込まれてくるような状況になる。それはサザ愉快なことであろう。

 しかしそれはあちら側の利得に関わることであって、こちら側には関係ない。JRの発券機を利用するとご褒美として何かがポロリと出てくるということではない。おまけとして10円玉が出てくることすら金輪際ない。そんなものに、どうしてつき合わされなければならないのだろう。お客様は神様ではなかったのか。納税者は主権者ではなかったのか。

【デジタルエゴイズム社会】

 おそらく彼らにとって、人は単なる負担者、利用頻度に応じた金銭納付者に過ぎないのだろう。だから、彼らの都合よく設定したシステムの中で手っ取り早く処理させたい。そうすることで浮いた財や人材は、彼らが必要と選択した分野に集中する。国税庁はおそらく、国民からもっと絞り取る、つまり課税を厳格化し、徹底的に絞り取るために人材配置するのだろう。その行き着くところは、財務省栄えて国民滅ぶ、である。