【熱狂】

 株価の上昇が続いている。今日も200円ほど続伸して始まり「史上最高値」のフレーズが踊っている。ただ、利益確定も出ているようで、このまま日経3万9千円台を維持するかは心もとないが、いったん下げた後の4万円大台突破となるだろう。水に落ちた犬は叩き、勝馬には競って乗りたがるのが人の習性なのである。問題はその後である。

【神はなくとも信者はいる】

 日本の株式市場を支配しているのは企業と海外勢である。個人株主は6000万人を超えるというが、その保有株の金額割合は18%弱しかない。(2022年度東証公開資料)市場は圧倒的に企業、資本の意向の下にある。個人が4万円を信じて新規に参入したとても、相場を上げる力にはほど遠く、外国法人が手を引けばあっという間に暴落する。投資信託頼みのNISAなどいくら流入しても穴埋めにはならない。その傾向を強めるだけのことである。

【最適解の不明】

 それでは、この熱狂の中での最適判断はどうなるのだろう。新規購入は危険である。はしごは高く掛けられ、もはや外されかかっている。ヘタにのぼれば取り残されるだけである。

 じゃあ利確してさっさと降りるのが賢明なのか。問題となるのは、来年後半まで2%超とIMFお墨付きのインフレの進行である。日銀総裁がシャアシャアとインフレと認める情勢となっても、利子率は0コンマ以下なのである。せっかく市場で取り返した資金を、預金口座からまんまと盗まれるということになる。株で元金を倍にしても、預金の実質価値が半分になったら元も子もない。

【万人が落ちる】

 盗まれないためには、再投資するしかなく、市場に再参戦するしかない。そしてそれこそが危険なのである。ニュートンが南海泡沫事件でやらかした失敗がこれである。いきなりの暴落で損したのではなく、いったん利確した後、再上昇を狙った再投資で4億ほどスッたとされている。計算したつもりになっているだけの「狂った行動」は、天才でさえ計算できない。(「日経ビジネス」玉手義朗ほか参照)どう転んでも危ないだけ。悩みは尽きないのである。