【戦いやまず】

 敗戦受諾宣言の日なのに、まだ戦っている。

 まるでソ連軍のようだが、敵はカラスである。ブドウを荒らしにくる悪辣なカラスを撃退するために、日々知恵を振り絞っているのだ。昨日は、ブドウ棚の下の空間にテグスを張ってみた。羽が引っかかるのを嫌がって侵入を諦めるだろうと考えたのだ。

 で今朝、歯磨きをしながら鼻歌混じりで確認してみると、白い袋が散乱していた。こちらの反応を嘲笑うかのように一面の紙袋である。どうやらブドウ蔓の上から、嘴で地上に突き落としたのを、歩いてやってきてゆっくりと食っていったらしい。それならテグスは障害にならない。頭がいい。

 感心している場合ではない。いっときは呆然とし、その後怒りに打ち震え、舌切りなどでは済まぬ、目ん玉ほじくり返してやると非人道的な本性をあらわにしてしまった。

 こうなったら知恵比べである。次はブドウ棚の上一面に網を被せてみる。上から突き落とすのを防ごうというわけだ。でも、それでもダメで、カラスの方が頭がいいという結果となったらどうしよう。立ち直れない気がする。

【野口氏のご託宣】

 さて、野口由紀雄が、随所でマイナカードに関して発言している。結論は「うまく機能するはずがない」である。国民の評価を得られない政策だからである。

 国民のマイカに対する怒りは、政権に対する不支持となって現出し、(内閣支持率+自民党支持率)は50%を割った。青木法則によればすでに政権末期である。

【インド以下という現実】

 政府にDX推進の焦りがあるのは理解できる。日本はすでにインド以下なのである。しかしそれは、英語力においてインド以下であるのと同じ構造を有している。

 インドに限らず、旧植民地国は現代化が未熟で、様々な不都合が生じていた。通信に加え、貨幣、金融システムも例外ではない。通貨も銀行預金もどこかに不備があり、国民の多くが決済手段として利用し難い状態があった。

 それがスマホの出現によって激変した。各人が小さなパソコンを所有することで、デジタルに連結されるようになった。英語ができれば、先進国の個人との交渉も可能になる。それが途上国のDXである。

【先進国日本の勘違い】

 しかし日本では、有線電話が普及しており、過剰発行で円安気味とはいえ日銀券の信用は盤石で、決済システムは安定している。うまくいっているから、あえてデジタル化する必要などないのだ。それは、日本語でほとんど事足りるので、英語を話す必要がないのと類似している。

 ところが、途上国になど負けてはならない、先進国日本は世界の先頭に立ち、美しくあらねばならない、などと鼻息を荒くする人達がいて、「改革」を叫び始めた。その頭に、DXでどれだけの人が便利になるのか、快楽計算的な個人のメリットが実現されるか、とかの発想はない。生活からかい離した「豊葦原瑞穂の国」、「神国日本」水準の標語があるだけである。極めてアナログな「改革」動機なのだ。

【12桁の背番号】

 マイナンバーはすでに実現されている。その効率的で公平な運営を進めればいいだけなのに、連中はマイナンバーカードの「携行」を国民に強制しようとした。

 病院や薬局で支払いのためにマイカを「出す」とか、コンビニで住民票という紙を入手するためにマイカを「使う」とかは、アナログの極地である。そのような手続きなど一切なしに、顔認証、あるいは一歩譲って暗証番号で全ての手続きが完了する。それこそがデジタル化である。

 ところが、肝心のそのデジタル化をおざなりにして、アナログな部分での策謀を巡らした。病院で保険が使えなくなるぜ、とムチを奮って国民に強制しようとした。番号を付けて呼ぶだけでは満足せず、ゼッケンを背中に付けて歩けと言い出したようなものである。推進している連中の考えが、そのようにアナログの極致なのだから、デジタル化が破綻するのは当然である。

【呆れたボーイズ&ガールズ】

 合理性がなくとも、当事者に利益がなくとも、上から強制すれば通る、いや通してみせる。それが有能な統治者であるとの風潮が、近年蔓延している。安倍、菅政権はそのようなものであり、岸田はなんの考えもなく、それゆえにてらいなく強権政治を継承している。

 政治だけではない。頭がいいと自認する実はおばかな連中が、下からの現実的な反応を無視し、合理的と強弁して突っ走り、あげくの果てに頓挫する。そのような無残な失敗がどれだけ続いていることか。家電、半導体の凋落を筆頭に、原発、MRJ、H3,そしてEVと枚挙にいとまがない。30年間所得が増えないのは当然なのである。

 そしていま、また同じ轍を踏んで失敗しようとしている。お隣では大阪がバクチやろうぜと空足を踏んでいる。日本はもはや世界から、救いようのない、呆れた連中と見下される存在と成り果てたのかもしれない。ひょっとすると、カラス以下かもしれない。