【黒田から植田に】

 黒田の後継日銀総裁が植田和男となった。メディアの雨宮と中曽の争いとの事前予想は完全に外れた。為替市場は、岸田の黒田路線転換の意思の現われではないかと反応して、1円以上の円高となった。しかし、その後の植田は金融緩和を継続するとの温厚な言に終始し、為替は元の水準に復帰した。だが、路線転換がなくなったということではない。

【敵前逃亡】

 雨宮と中曽が総裁とならなかったのは、固辞したためだとの報道がある。彼らが、黒田の異次元緩和を否定し、露骨に転換を図るわけにはいかない。しかし、続けていく自信はない。もう収拾がつかないのだ。当事者であるだけによく分る。黒田路線はそこまで行き詰まっているということである。己らのやらかした不始末の尻拭いができないと投げ出すなど、無責任この上ないが、継続するもしないもない。もうできないのだ。

【植田に岸田】

 異次元の金融緩和とは、結局は財政ファイナンスだった。日銀の制限のない買い入れに支えられた野放図な国債発行こそが実態だったのである。当然に需要拡大策とはなったが、効果以上に累積債務が増えた。普通国債残高は、昨年末時点で1005兆7772億円と、千兆円を超えたと発表されたばかりである。

 だが岸田は、この便利な打ち出の小槌を手放すつもりはない。DX国債とか何とか国債とか名づけて、防衛費の財源とするつもりなのだ。政権の安倍路線の継承は、そのまま金融政策黒田路線の継承となる。金融庁や日銀理事出身の副総裁の人事から見ても、植田がそれに抗するのは難しい。しかし金融緩和の修正もしなければならない。

 植田は、撤退の殿という難問、出口戦略の方途を探なければならない。それはたぶん、東大入試よりも難しい。

【次の一手】

 植田が抵抗なく金融緩和を縮小できるようになるとしたら、岸田の退陣、自公政権の崩壊しかない。ただ問題は、万一政権交代が起っても、そこにも財務省路線信奉者が巣くっているということにある。きっぱりと否定する政策を打ち出せるのは共産党くらいのものだろうが、そこもスターリン主義のままであることを露呈してしまったばかりで、頼りにならない。日本の八方は、衰退への坂道へと繋がるように塞がってしまったかのようである。呑気に鼻の手術なんかをしている場合ではないのである。