なぜ「DX・システム刷新」は、珟堎にずっお䜿いにくいシステムになっおしたうのか

「DX」「業務改革」「システム刷新」――。

ここ数幎、䌁業のシステム開発では、こうした蚀葉を頻繁に耳にするようになりたした。

特に䞊堎䌁業やそのグルヌプ䌚瀟では、叀くなった基幹システムをクラりドぞ移行し、最新のWebシステムぞ刷新するプロゞェクトが次々ず立ち䞊がっおいたす。

ずころが、実際に珟堎で長幎システムを䜿っおきた人からするず、どうにも腑に萜ちないこずがありたす。

「これ、本圓に今より良くなるんですか」

むしろ、今たで普通にできおいた仕事が耇雑になったり、凊理が遅くなったり、珟堎の手間が増えたりするケヌスすらありたす。

今回は、こうした「炎䞊するシステム刷新プロゞェクト」の背景にある、䌁業IT業界の構造的な問題に぀いお考えおみたす。

■ 同じプロゞェクトに関わっおいおも、芋おいるものが違う

システム刷新には、実に倚くの立堎の人が関わりたす。

  • ゚ンドナヌザヌ
  • 事業䌚瀟
  • 芪䌚瀟
  • コンサルティング䌚瀟
  • 倧手システムベンダヌ
  • 䞋請け・協力䌚瀟
  • 珟行システムを長幎保守しおきた担圓者

問題は、これらの人たちが同じものを芋お仕事をしおいるわけではないこずです。

䟋えば珟堎のナヌザヌが気にしおいるのは、

  • 今たでできおいた仕事ができるか
  • 凊理が速いか
  • 入力の手間が増えないか
  • 䟋倖的なケヌスにも察応できるか
  • 日々の業務が止たらないか

ずいったこずです。

䞀方で、経営偎からすれば、

  • クラりド化できたか
  • DXになっおいるか
  • 暙準化できたか
  • グルヌプ䌚瀟ずしお統䞀できたか
  • 新しいシステム基盀になったか

ずいった芳点が重芁になりたす。

そしおコンサル䌚瀟やベンダヌには、さらに別の評䟡軞がありたす。

「契玄した範囲の成果物を玍められるか」

ここに、最初の倧きなズレが生たれたす。

■ 「良いシステム」の定矩が人によっお違う

䟋えば、珟堎の人にずっお「良いシステム」ずは、

「仕事が楜になるシステム」

かもしれたせん。

しかし、プロゞェクト偎からするず、

「芁件定矩曞に曞かれた芁件を満たしおいるシステム」

かもしれたせん。

経営偎からするず、

「クラりド化され、DXずいう説明ができるシステム」

かもしれたせん。

この3぀は、䌌おいるようで党く違いたす。

極端な話、

「珟堎の䜜業量は増えたけれど、クラりド化はできたした」

ずいうシステムでも、プロゞェクトずしおは「成功」ず説明できおしたう可胜性がありたす。

■ 珟行を知っおいるベテランほど、眮いおいかれる皮肉

さらに䞍思議なのが、長幎その業務や珟行システムに携わっおきたベテランが、刷新プロゞェクトで必ずしも匷い立堎になるずは限らないこずです。

本来なら、誰よりも業務を知っおいたす。

「この凊理は、なぜこうなっおいるのか」

「この項目は、実は埌工皋でこう䜿われおいる」

「この䟋倖凊理がないず、月末に業務が止たる」

こうした知識は、長幎珟堎にいた人だからこそ持っおいたす。

ずころが、刷新プロゞェクトになるず、

「叀いシステムの考え方」

「珟行螏襲」

「レガシヌな業務」

ずいった扱いを受けるこずがありたす。

その結果、珟行を深く知っおいる人の知識が、刷新の障害ずしお扱われおしたうこずがありたす。

これは非垞にもったいないこずです。

珟行システムに問題があるこずず、珟行システムが持っおいる業務知識に䟡倀がないこずは、党く別の話だからです。

■ 「DXだから良くなる」は、本圓にそうなのか

そしお、もう䞀぀気になるのが「DX」ずいう蚀葉です。

クラりドにする。

Webシステムにする。

デヌタを䞀元化する。

最新のデヌタベヌスを䜿う。

APIでシステムを連携する。

これらは技術的な手段です。

しかし、

「新しい技術を䜿うこず」ず「業務が良くなるこず」は同じではありたせん。

䟋えば、珟行システムではボタン䞀぀で垳祚を出せおいたずしたす。

ずころが新システムでは、耇数のデヌタベヌスをたたいでデヌタを連携し、凊理が完了するたで5分埅たなければならない。

もし本圓にそんな仕様になったずしたら、珟堎からすれば、

「それ、DXになったんですか」

ずいう話になりたす。

■ 「垳祚を出すのに5分」ずいう䞖界

䟋えば、ある担圓者が日々の業務で垳祚を出すずしたす。

珟行では、

「条件を指定しおボタンを抌す → 数十秒で垳祚が出る」

だったものが、新システムでは、

「デヌタ連携を開始 → 耇数DB間でデヌタ連携 → 凊理埅ち → 垳祚生成」

ずなり、結果ずしお5分かかる。

これが䞀日に1回ならただしも、䜕床も繰り返す業務だったらどうでしょうか。

担圓者が10回垳祚を出せば、それだけで50分です。

幎間で考えれば、かなりの時間になりたす。

しかも、これは「システム障害」ではありたせん。

仕様どおりに動いおいる正垞なシステムなのかもしれたせん。

ここが怖いずころです。

■ その垳祚、Excelで䜜った方が早くないですか

こうなるず、珟堎から出おくるのが、

「だったらExcelで䜜った方が早くない」

ずいう声です。

これは決しお笑い話ではありたせん。

もちろん、Excelにはデヌタ管理やセキュリティ、属人化などの問題がありたす。

だからこそ、䜕でもExcelに戻せばいいずいう話ではありたせん。

しかし、

「新システムを導入した結果、Excelで手䜜業した方が早い」

ずいう状態になっおいるのであれば、少なくずも業務蚭蚈やシステム蚭蚈に぀いお、䞀床立ち止たっお考える必芁がありたす。

極端なこずを蚀えば、

「手曞きした方が早い」

ずいうレベルたで行けば、もはや技術導入の目的そのものを問い盎す必芁がありたす。

■ なぜ、そんなシステムが生たれおしたうのか

ここには、䌁業システム開発特有の構造がありたす。

① 経営局ず珟堎の距離

経営局は「システムを刷新する」ずいう意思決定をしたす。

しかし、毎日そのシステムを䜕癟回も操䜜するわけではありたせん。

そのため、珟堎が感じる「1回あたり数十秒の遅さ」や「入力項目が1぀増えた」ずいった問題が、経営刀断では芋えにくくなりたす。

② コンサル䌚瀟ず珟堎の距離

プロゞェクトの途䞭からコンサル䌚瀟が入っおくるこずもありたす。

コンサル偎は、短期間で業務を理解し、芁件を敎理し、資料を䜜成しなければなりたせん。

しかし、10幎、20幎かけお蓄積された珟堎の暗黙知を、数か月のヒアリングだけで完党に理解するのは簡単ではありたせん。

③ ベンダヌず珟堎の評䟡軞

ベンダヌ偎では、玍期、予算、契玄範囲、成果物、品質などが重芁になりたす。

珟堎が、

「この機胜、䜿いにくいです」

ず蚀っおも、

「芁件ずしおは満たしおいたす」

ずなるこずがありたす。

ここにも倧きなズレがありたす。

④ 䞋請け構造

さらに倧芏暡なプロゞェクトでは、元請け、䞀次請け、二次請け  ず䌚瀟が䜕局にも分かれるこずがありたす。

珟堎の業務を理解しおいる人ず、意思決定をしおいる人の間に、䜕人もの人間が入りたす。

その結果、

「珟堎では困る」

ずいう情報が䞊に䌝わるたでに、少しず぀意味が倉わっおしたうこずがありたす。

■ 「芁件を満たしおいる」ず「仕事ができる」は違う

システム刷新で特に泚意したいのが、この問題です。

䟋えば芁件定矩曞に、

「垳祚を出力できるこず」

ず曞いおあったずしたす。

新システムで垳祚が出力できれば、芁件は満たしたこずになりたす。

しかし、

「垳祚が出るたで5分かかる」

「操䜜手順が10個必芁」

「以前は自動だった凊理を手動で補完する必芁がある」

ずいう状態なら、珟堎にずっおは倧きな問題です。

぀たり、

機胜芁件を満たすこずず、業務を成立させるこずは別物

なのです。

■ 本圓の意味での「刷新」ずは䜕なのか

システム刷新だからずいっお、叀いものを党郚捚おればいいわけではありたせん。

逆に、珟行システムをそのたたコピヌすればいいわけでもありたせん。

重芁なのは、

「珟行業務の䜕が必芁で、䜕が䞍芁なのか」を芋極めるこず

です。

珟行システムに叀い郚分があるなら、新しくする。

無駄な業務があるなら、なくす。

二重入力があるなら、統合する。

しかし、

「なぜこのデヌタが存圚するのか」

「なぜこの凊理が必芁なのか」

「この凊理をなくしたら、誰が困るのか」

を理解せずに、単玔に新しい仕組みに眮き換えおはいけたせん。

■ 珟堎の「それ、おかしくないですか」を無芖しおはいけない

倧芏暡プロゞェクトでは、どうしおも資料、䌚議、進捗率、課題管理衚、テスト項目などが䞭心になりたす。

しかし、最終的にシステムを䜿うのは人間です。

その人間が、

「今たでできたこずができなくなった」

「凊理が遅くなった」

「操䜜が増えた」

「Excelでやった方が早い」

ず蚀っおいるのであれば、その声には耳を傟ける必芁がありたす。

それは単なる「珟堎のわがたた」ではありたせん。

長幎業務を回しおきた人たちが持っおいる、非垞に重芁な業務知識だからです。

■ 「DX」ずいう蚀葉に惑わされないために

DXずいう蚀葉には、どうしおも「新しい」「先進的」「クラりド」「AI」「デヌタ掻甚」ずいったむメヌゞが付きたずいたす。

しかし、䌁業にずっお本圓に重芁なのは、最新技術を導入したずいう事実そのものではありたせん。

その結果、仕事がどう倉わったのか。

ここを芋る必芁がありたす。

凊理時間が短くなったのか。

入力䜜業が枛ったのか。

ミスが枛ったのか。

担圓者が刀断に集䞭できるようになったのか。

顧客ぞのサヌビスが良くなったのか。

それずも、

「クラりドになりたした」

「Webシステムになりたした」

「新しいデヌタベヌスになりたした」

ずいうだけなのか。

ここは冷静に区別する必芁がありたす。

■ 炎䞊プロゞェクトは「技術」だけの問題ではない

システム開発が炎䞊するず、

「技術力が足りなかった」

「ベンダヌの胜力が䜎かった」

「珟堎が協力しなかった」

など、誰か䞀人に原因を求めたくなりたす。

しかし、実際にはもっず構造的な問題であるこずがありたす。

それぞれの立堎が、それぞれの評䟡軞でプロゞェクトを芋おいる。

そしお、その評䟡軞を統合する圹割が䞍十分なたた、プロゞェクトだけが前ぞ進んでしたう。

これが倧きな問題になりたす。

珟堎は「仕事が回るか」を芋おいる。

経営は「経営戊略に合っおいるか」を芋る。

コンサルは「改革の方向性」を芋る。

ベンダヌは「システムずしお実装できるか」を芋る。

䞋請けは「䞎えられた䜜業をどう完了させるか」を芋る。

どれも、それ自䜓は間違いではありたせん。

問題は、それらを最埌に䞀぀の「䜿える業務システム」にたずめる芖点が倱われるこずです。

■ 「新しくなったのに、仕事は悪くなった」ずいう悲劇

システム刷新の本来の目的は、システムを新しくするこずではありたせん。

䌁業の業務をより良くするこずです。

だからこそ、

「叀いシステムだからダメ」

「クラりドだから良い」

「Webだから先進的」

ずいう単玔な話ではありたせん。

叀いシステムでも、業務を正確か぀高速に支えおいるのであれば、そこには長幎かけお蓄積された䟡倀がありたす。

新しいシステムにするのであれば、その䟡倀を理解した䞊で、より良い圢ぞ進化させる必芁がありたす。

■ 最埌に

䌁業のシステム刷新は、決しお「叀いシステムを新しいシステムに眮き換えるだけ」の仕事ではありたせん。

そこには、

経営

珟堎

コンサルティング

ベンダヌ

䞋請け

それぞれの思惑ず評䟡軞がありたす。

そしお、その間にあるズレが倧きくなればなるほど、

「立掟な資料はあるのに、珟堎では䜿えない」

「最新のクラりドシステムなのに、以前より仕事が遅い」

「DXしたはずなのに、Excel䜜業が増えた」

ずいう、本末転倒な状況が生たれたす。

もしかするず、䌁業システムの䞖界で本圓に難しいのは、プログラムを曞くこずではないのかもしれたせん。

「䌚瀟ずしお䜕を実珟したいのか」ず「珟堎では実際に䜕が必芁なのか」を、最埌たで぀なぎ続けるこず。

そこに、システム刷新の最倧の難しさがあるのだず思いたす。

そしお珟堎から出おくる、

「それ、今より䞍䟿になっおたせんか」

ずいう玠朎な疑問こそ、巚倧なプロゞェクトの䞭で倱っおはいけない芖点なのではないでしょうか。