私の最大級の確認方法は、きっと強迫性障害を経験したことのない人にとっては滑稽なものだったと思われる。

 

エアコンをつけては決して、つけては消すこと数十回。リモコンの画面に何もないことを何度も何度も確認した上で、本体の電源を見る。1メートル離れて確認、エアコンの真下に来て再度確認、1メートル離れて確認と何度も繰り返すため、肩こりと首の痛みが続いた。終了して、ガス台を確認している間にまたエアコンの下に戻る。今から客観的に見ると、脳に習慣付いてしまったエラー反応が繰り返されていることがよく分かる。繰り返せば繰り返すほど、エラー反応の感度がよくなっていく。

 

ガス台も、右から見て、左から見て、上から見て、間近で見て、同じものを見ているのに納得できない。確認作業を増やすと、次回から雪達磨式に増えていく。脳の記憶力のよさは驚くほどだった。

 

あるとき、確認対象に近付くと体の緊張感が高まることに気付いた。近寄らないときちんと確認できないのではないかという不安と戦いながらも、近寄ることが生み出す緊張感が、確認作業を増幅させていることに気付いた。

 

あまり近寄らないで確認しよう、と心に決めた。家を出る前は緊張感が増すので、家を出る予定がないときに、どの距離が適切か、ガスを点けたり消したりしながら、自分の反応を確かめた。そこで決断した距離。

 

この距離を保つことで、家を出るまでの距離が少し縮まった。一度できれば徐々に距離を伸ばすことは少し易しくなる。この距離の効果は、想像以上だった。

私の不安が最高値に達していたのは、ガス台の前。

何度見ても、触っても、写真を撮っても、火事になる妄想は深まるばかり。

 

ある日、姿勢が前かがみになり、ガス台を真剣に睨みつけ視野が狭くなっていることに気がついた。

 

姿勢を正し、目の力を弱め、ぼんやりとガス台を見つめる。同じものを見ても、不安感が格段に下がることに気づいた。

 

最初の頃は、すぐにガス台は離れられなかったし、姿勢もすぐには治らなかったが、気づくことができるようになった。

繰り返していくことで、姿勢が自然とよくなり、ガス台の見方が変わった。

 

たかが姿勢、されど姿勢。

 

最近、様々な研究結果から、脳は実際の体験と想像上の体験を区別できないことが分かってきた。目の前に、鮮やかな黄色をしたレモンがある、そのレモンを包丁で8つ切りにし、その1つをかじることを想像するだけで唾液の量が増えるのは誰もが簡単に体験できる一例。

そして、習慣は繰り返す回数が多くなるほど、体が覚えていく。

 

家を出られないのではないか、明日は家を出るまでに何時間かかるだろう、ガス台の前で30分ガス台を眺めて、触って、様々な方向から大丈夫か見て、写真を撮って、と何をするかを事細かに想像すればするほど、体は覚えていく。では、それを一度想像してしまったら、簡単に出られる自分をその倍以上想像すればよい。そんなこと想像すらできないというのであれば、いつもより5分、いや1分でも速く終われる自分を10倍の回数想像すればよい。馬鹿げた想像だけど、自分にとってはとても有効な方法でした。

 

何度も何度も繰り返すことは、不安障害の人にとっては苦痛だけれど、実施できる能力を持っているはず。また、実際に確認時間を減らすことより、想像上で短い確認時間で出られる自分を想像することの方が、少しは楽にできるはず。より細かいところまで想像することで、より高い効果を生むことができると思われます。