昼食後。夜間に活動性が高まる患者さんが昼寝してるのを叩き起こして
屋外歩行訓練(平たく言えば散歩だ)を行い、怪我をした片麻痺の患者さんが
訓練拒否気味なのを院内散歩に連れ出し立位訓練を行い、
心臓に期外収縮を持つ患者さんが歩く!と騒ぐのをなだめていると
風邪を引いてから認知症(前の名は痴呆症)が進んでいると危惧される
患者さんが騒いでいる。「関東大震災だ!」
この前は自分が乗っている車椅子が「低カロリー車椅子」だ、と真面目に
わしに主張してくれたもんでついついわしも
「関東大震災は昔の話でしょ。大正11年だかの11月1日だったっけ?」
親切なケアさんが「大正12年9月1日です」と教えてくれる。
そうだ、だから9月1日は防災の日だったな。
しかし患者さんは「地震が来るよ」と終いには泣き始めている。
大丈夫、もう終わったよとなだめながらも看護師さんに
「他の病棟でも地震が来るって患者さんがいるんですよねえ、何なんだろう」
と首をひねり話しかけるわし。
そうなのだ。ここのところ「地震が近いと空が赤くなる。」とか
「関東大震災の時に」など熱心に地震の話題をする患者さんが計3名。
これが今日の2時30分頃の話だ。
期外収縮の患者さんの脈を診ながらの訓練から帰るとロビーのテレビニュースが目に入る。
「本日2時55分ごろ、北海道で震度5の地震が_」
なんですと?
慌てて食堂へ行くと、さっきの患者さんは泣いたことなど忘れたようにケロっとしている。
「××さん、確かに地震はあったよ」
「そうでしょ?あたしゃ地震の真っ最中に生まれたんだもの、わかるんだよ」
つっこませて戴けばカルテの生年月日から言うと真っ最中ではないことは確かだ。
それは言わなかったが別のことで突っ込んでみる。
「んでもね、関東じゃなくて北海道だったよ」
「へーそおかー。もうしばらく関東には地震はないよ」
「そう、そりゃ良かった」
偶然かもしれないが図らずも予知になったわけで、その人が「もうない」
と言えばなんとなく安心なような気がする。
「後はT川辺りで1つ起こるけどね」
T川は思い切り関東だ。
しかもT川には大きな活断層があるのだ。おそらくその患者さんはそのことは知らない。
とりあえずしばらく地震予想組の動向には注意しておくことにする。
場所は予想と外れる可能性はありでつが。