毎日S哉(21になったばっかりお茶目なしっかり者)のトレーニングは続く。
現在約3週間が過ぎたが、若者特有のハネハネ歩行は控え目になった。
そして体幹のバランスはみるみるよくなった。若いって素晴らしい。
曜日担当制にしている他の班と違って我々の班は全員が毎日一緒に
訓練しているので我々にも何らかの効果があったりする。
R子ちゃん(25才副班長)はタオルギャザー(足の指でタオルにしわを寄せながら
足掌に集める)が上手くなった。これは高齢者の転倒予防に使われる訓練でもある。
M月くん(28歳実生活は跳ばないジャンパー)には体幹筋を鍛えて今シーズンに
2m跳ぶという目標を設定した。
Yくん(28歳当校一の美青年)正常の見本でよく使われるが
色男だけに力がないことがわかった。でも色男だから訓練はしない。
I原くん(28歳敬虔な宗教家)は毎日ボケが上手くなっている。
そして私はS哉と同じメニューをこそこそ自主練しているのだが、気付いたら
左だけ足関節の可動域が大きく改善していた。右は股関節のアライメントが
おかしいので改善しないこともわかった。恐らく体幹筋力不足に原因がある。
それはマシンなどで腹筋・背筋トレーニングをしても駄目だ。駄目だった。
体幹バランス訓練の方が余程効き目があったぞ。PTってすげえ。
技術論の発表用訓練は授業外であるので(つまりこれらは全てサービス残業だ)
それとは関係なく授業は進む。この前は物理療法で低周波療法であった。
例によって初めにスケープゴートになるのはYくんだ。こわごわ脚を出した所を
あーのこーの機械を取り付け痛いというのを無理に刺激を上げたりして遊ぶ。
我々の近くに座るといじめられるのだから逃げればいいものを・・・と
書きながら一瞬思ったが思えば彼の隣に座ったのはわしであった。
時間はたっぷりあるのでA野くん(24歳坊主ヒゲ)の脱臼した肩とか
O園さん(30歳坊主部主将)の鈍い腰とかわしの商売道具の前腕とか
S哉の顔にとりつけて遊ぶ。
「これってアブトロニクスと同じ原理だよね」
「そだね。でもさ脂肪の燃焼って有酸素運動20分以上だよねえ?」
などと言ってると京大工学のO村(29才ぬいぐるみ)が真顔で
「そうだよ、脂肪の燃焼と筋線維の増強とは別だよ。だから寧ろ太くなるはずだ」
京大だからというよりO村はでけえから信憑性がある、とは本人に言えない。