このひと、だーれだ。
ヒント。
はーい、そうです。
彼女は、イタリアのマンマ、マリア・モンテッソーリ 。
1000リラ紙幣にも顔が刷られている彼女は、
19世紀のイタリアで女性として初めて医学博士を取得し、その生涯を子どもの教育にそそいだ人。
子どもに大人のやりかたを「教え込む」旧来型の教育方法を超えて、
子どもの「生まれもった天賦の才能をのばして活かす環境をつくる」ことを教育法として確立させた。
先生が「さあ、みんなで歌を歌いましょう」とうながすスタイルの幼児教育では、中心にいるのは先生。
モンテッソーリの手法を取り入れた園では、中心にいるのはあくまでも子ども一人ひとりで、
「わたしがひとりでできるように、せんせいはてつだってね」ということになる。
現在でも、その教育を受けて育った有名人をあげたら、キリがない。
ワシントンポストを経営するジャーナリストのキャサリン・グラハム、
『アンネの日記』の著者アンネ・フランク、
世界最大の検索サイト“google”の創設者サーゲイ・ブリンとラリー・ページ、
フリー百科事典サイト“Wikipedia”の創設者ジミー・ウェールズ、
インターネット書店“Amazon.com”の創設者ジェフ・ベゾス、
ダライ・ラマ14世の末妹で、チベット子ども村の校長先生の ジェツン・ペマ、
次世代を担うカナダの環境リーダー、セヴァン・スズキ・・・
などなどなど、ジャンルはさまざまだけど、
ハッとする個性をもって新しい分野で活躍している人が多い。
ドイツのシュタイナー教育 とならんで、世界中で実践されている自由教育がモンテッソーリ教育 だ。
その歴史、すでに100年以上。
* * *
私がモンテッソーリ・ファンになったのは、去年から。
モモが生まれて、地元・久我山のモンテッソーリ園に遊びにいってからのこと 。
「大人のことば」で教え込むのではなく、
子どもたちが「自分のからだ」を使って物事を理解できるようにと、
モンテッソーリ教育では本当によく工夫を凝らしたさまざまな感覚教具を使っている。
ひとつひとつ、木で丁寧につくられた見た目もかわいい積み木やパズル。
「教具」を使って子どもの能力を伸ばし、
実際に社会的に活躍している人材を多く育てていることも手伝ってか
「モンテッソーリって、エリート教育なんでしょ」という批判めいた声を聞くこともある。
でも、知れば知るほど、決してそうじゃない。
横浜の「むくどり保育園 」、「風の丘保育園」、高尾の「こどもの家 」、聖蹟桜ヶ丘の「ウィズ・チャイルド 」・・・。
見学しに行ったどの園も木の香りにあふれ、地元野菜のオーガニック給食を出し、
子どもたちはとっても楽しそうで、先生たちは真剣に自然な教育と保育を追求していた。
(マリア・モンテッソーリの哲学を無視して感覚教具だけを導入した
エリート養成塾のような場所も、実は本当にでてきているらしいけれど。)
もともと、モンテッソーリ教育は、
イタリアの精神病院、そして労働者の人々のコミュニティの中で芽生え、発展したもの。
男の子、女の子、五体満足な子、そうでない子、障害のある子、障害のない子、誰でも、
とにかく1000人子どもがいたら、1000人ともが生まれながらにして「天才」だ。
でも、これまでの社会と教育では、そのうちの999人ぶんくらいがつぶれてしまっていた。
だから、大人の仕事は、子どもに何かを「教えること」ではなく、
子どもの天賦の好奇心と才能を信じて、それを「受け入れ、伸ばすこと」だと考える。
医学と哲学と心理学を駆使してモンテッソーリ博士がやってきたこと、
100年前から今まで受け継がれてきているモンテッソーリ教育の真髄というのは、
究極的にはただそれだけのことなんだと思う。
* * *
さて。
子どもを生むって 、自分の命と子どもの命をとおして
世界中すべての命がつながっていることを実感するような圧倒的体験だ。
そしてそのあとに待っている子育てというのは、
日に日に加速する「一般社会の時間枠」からイチヌケタをして、
人間がみんな生まれながらに持っている「自然の時間枠」に身を添わせるような作業。
だから、出産と子育てを経て徐々に環境問題や世界の子どもの問題に関心を寄せる人が増える。
その割合は、とくに女性、おかあさんに多い。
私は、しばらく前から、
自分の職場であるピースボートの「地球一周の船旅」に
子育て中のおかあさんが参加するには、どうしたらいいかを考えていた。
私自身、海外を現場とするNGOで働いているからにはやっぱりたまに船にも乗りたいけれど、
自分の仕事のためにモモを日常生活から引き離して、大人ばっかりの空間に
ベビーシッターを同伴して連れていくという選択肢は、なかった。
子どもを大人の都合につきあわせるのではなく、
子どもにとっても楽しい環境を用意しなくちゃいけない。
それができれば、世の中のお母さんたちはきっと喜んで見聞を広めて、
真剣に子どもの未来を創る人たちになっていくんじゃないか。
そう考えて、この夏、
ピースボートの洋上に、モンテッソーリ・プログラムを開催しようと準備をはじめた。
すでに心強いアドバイザーとして、国際モンテッソーリ協会元理事の深津高子さんや
その周囲の経験ある園長先生方からの全面的な応援を得ながら計画をすすめている。
当面の目標は、来年の春に横浜を出航する第66回「地球一周の船旅」で実施すること。
世界一の平和活動家よりも、世界一のお母さんのほうが、よっぽど力強い「平和」をつくる。
私はそう思っている。
真剣に子どもの未来を考えているお母さんたちが集まって、
それぞれの子どもたちと一緒にパレスチナ難民キャンプを訪れ、
ケニアの大自然を感じて、孤児院の子どもたちと出会い、北欧の環境と教育を学び、
ラテンアメリカを歩いて、太平洋でホームステイして・・・
それぞれの土地でたくさんの子どもとお母さんに出会い、子ども同士、お母さん同士がつながる。
なんだか、ものすごい化学変化が起こりそうじゃない?
というわけで。
洋上モンテッソーリ・プログラム「ピースボート子どもの家」、
確定したらブログでもまたお知らせしまーす。


