じゃじゃーん!!!

木楽舎の環境雑誌「ソトコト」で働いている友達から、嬉しい連載の話をいただいた。



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着物のお姉さんが美しい今月号から6回連続で、小さな記事を書かせてもらうことになりました。
機会があれば、ゼヒゼヒお手にとってみてください。


私はつねづね、ブラジル文化に自分でもよくわからない情熱 を持っているので、



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以下、連載第1回目のおはなしは、もちろんブラジルを書きました。
ブラジル・ファベーラのクールな若者集団 「Afro Reggae /アフロヘイギ 」 の話です。



* * *


ボアノーイチ! 小野寺愛です。

年に3回「地球一周」する船旅を企画するNGO「ピースボート」で働いています。
旅の中で出会った世界中の素敵な人、場所、NGOを紹介する連載、はじめます。

第1回目の今日は、ブラジルから。




ブラジルといえば、リオのカーニバルと、サンバ、ボサノバ。

…ピースボートの交流ツアーでファベーラ(*1)を訪れるまでは、そう思っていた。
今は違う。ブラジルの魅力は文化だけじゃない。「人々」が、とことん魅力的なのだ。


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私が初めてアフロへイギ(*2)に出会ったのは、2001年のこと。

ブラジルの大都市人口の3分の1が暮らしているとも言われるファヴェーラのひとつ、
ヴィガリオ・ジェラウを訪れた。

ファベーラに住む人の多くは、
都市の工業化が進んだ1970年代をピークに、
農村地帯から職を求めて家族で大都市へと移り住んだ人々。

「麻薬や犯罪の巣窟」と一般市民から恐れられるファベーラを緊張しながら訪れたのだが、
実際のファベーラは、活気に満ちた庶民の生活の場だった。

とはいえ、聞くと、
高い失業率と不安定な生活を背景に、アルコールやドラッグへの依存、家庭崩壊、
犯罪や暴力のまん延…と、子どもたちを取り巻く環境は実際に年々悪化していたのだという。

貧困から抜け出すために「将来は麻薬ディーラーになる」「ギャングに入る」と
暴力に憧れる若者も少なくなかった。


そんな悪循環にウンザリした数人の若者がいた。

1993年、彼らは若者アート集団「アフロヘイギ」を立ち上げた。
レゲエやヒップホップのクールなビートを廃材パーカッションで打ち鳴らし、

暴力や麻薬の連鎖から抜け出そう
自分たちには無限の可能性がある
ヴィガリオ・ジェラウに誇りを感じろ

とポジティブなメッセージを乗せて登場したアフロヘイギに、子どもたちは熱狂した。


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地元ファベーラでのストリートライブからジワジワと支持を集め、
テレビや海外公演でも活躍し始めた彼らを見て、
ファベーラの子どもの夢が変わっていった。

子どもたちの夢が、
「貧困を抜け出すためにドラッグ・ディーラーになる」から、
「自分もアフロヘイギみたいになること」に変わっていったのだ。



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アフロヘイギのメンバーは
若い世代にダンスやサッカー、カポエラを教え続けた。

彼らが登場してからのこの10年間でファベーラの犯罪率は少しずつ下がり、
ワールドカップやハリウッド映画で活躍するファベーラ出身の若者も増えていった。



2002年。
カンヌ国際映画祭で、初めてファベーラが世界の脚光を浴びた。
リオ近郊のファベーラ、ヴィガリオ・ジェラウが舞台になった映画「シティオブゴッド」が賞を取ったのだ。

エンターテイメント性と物語性で大絶賛を受けた映画だったが、
ヴィガリオの住民たちはこれを喜ばなかった。

「なんて暴力的な映画なんだ。
 自分たちのポジティブなアートやエネルギーが表現されていない」

アフロへイギの創始者、サー・アンダーソンは言った。

「いつか、自分たちでポジティブなヴィガリオの映画を作るんだ」



そして2005年。
映画「ファベーラ・ライジング(原題。英語のみ)」が完成した。

アフロヘイギの10年間を追ったドキュメンタリーだ。


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今、
「ファベーラ・ライジング」は世界各国の国際映画祭で賞を取り続けていて、
日本への上陸も模索中。

今、
ローリング・ストーンズがリオデジャネイロで公演するときは、
彼らが直々にアフロヘイギに声をかけて前座演奏を頼むという。

すごい。

「どうだ、見たか!」
と得意気に笑うサーの顔が心に浮かぶ。


ブラジルの魅力は、躍動するような人々のエネルギー。

草の根のオルタナティブを創り出すパワーを牽引するアフロヘイギは、
これからも新しい挑戦をし続けるのだろう。


そしてそんな彼らと10年間をともに歩んだピースボートは、
今年もアフロヘイギに会うため、
ブラジルへと航路をむける。


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【注】
*1 ファベーラ: 
ポルトガル語で「スラム」のこと。
人口約1000万人の大都市サンパウロには、2000か所以上のファベーラが、
人口約600万人のリオデジャネイロには約720か所のファベーラがあり、
全人口の3分の1が暮らしているとも言われる。

*2 アフロへイギ : 
暴力と麻薬、警察の抑圧の連鎖から抜け出すために
1993年、リオ近郊のファベーラを拠点に設立された若者アート集団。
詳しくは http://favelarising.com/about_afro_reggae/index.html
(映画「FavelaRiising」サイトより。英語。)

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12月号、
もうすぐ発売予定のソトコトには、韓国の話を書きました。

こっちも、よかったら見てみてくださーい。