トラ猫トラニャの最後の写真は、
前回の記事でつかったものだ。
この写真を撮って間もなく、
トラニャは大きく目を開き、口を半開きにして
舌を突き出してあえぎ始めた。
そのおよそ9時間後、トラニャは死んだ。
伸び上がって、さらに目を見開き、
大きく口を開けて。
トラニャの死の姿を憶えておきたくて
写真に撮ることが頭の隅をよぎったけれど
けっきょく撮らなかった。
そういう気持ちになれなかった。
撮ってはいけないとは思わない。
それどころか、撮ることがでいていれば
その方がよかったとすら思うのだけれど、
撮ろうという気が起きなかった。
後悔はない。
大事な時間を素直な気持ちどおりにできて
よかったと思う。
死に顔は怖い感じだったので、
まず目を閉じようとした。
なかなかうまくいかなかったけれど、
ていねいに何度もなでているうちに
目を閉じることができた。
口も閉じた。
完全には閉じられなかったけれど
無理なくできる範囲で
ほとんど閉じることができた。
いつもの膝掛けを段ボールに敷いて
トラニャの遺骸を収めた。
体を丸めて眠っているかのようになった。
写真を撮ることがまた頭の隅をよぎったけれど
やっぱり撮ろうという気にはなれなかった。
