トラ猫最後の顔 | いきなり猫三匹と暮らす

いきなり猫三匹と暮らす

突如襲来した怪生物と犬好きのハートフルコメディ

トラ猫トラニャの最後の写真は、
前回の記事でつかったものだ。
 

この写真を撮って間もなく、
トラニャは大きく目を開き、口を半開きにして
舌を突き出してあえぎ始めた。

 

そのおよそ9時間後、トラニャは死んだ。
伸び上がって、さらに目を見開き、
大きく口を開けて。

 

トラニャの死の姿を憶えておきたくて
写真に撮ることが頭の隅をよぎったけれど
けっきょく撮らなかった。

そういう気持ちになれなかった。


撮ってはいけないとは思わない。
それどころか、撮ることがでいていれば
その方がよかったとすら思うのだけれど、
撮ろうという気が起きなかった。

 

後悔はない。
大事な時間を素直な気持ちどおりにできて
よかったと思う。

 

死に顔は怖い感じだったので、
まず目を閉じようとした。
なかなかうまくいかなかったけれど、
ていねいに何度もなでているうちに
目を閉じることができた。

 

口も閉じた。
完全には閉じられなかったけれど
無理なくできる範囲で
ほとんど閉じることができた。

 

いつもの膝掛けを段ボールに敷いて
トラニャの遺骸を収めた。
体を丸めて眠っているかのようになった。

 

写真を撮ることがまた頭の隅をよぎったけれど
やっぱり撮ろうという気にはなれなかった。