クロがボス猫の座についたのは、
シャムに勝ったからではなく、
シャムが無敗のまま引退したからだったようだ。
戦いの後にボスの交代があったので、
ハゲができたとはいえ、クロは勝ったのだろうと
解釈したのだが、どうやらそうではなかった。
だからこそ、クロはボス猫になった後も
シャムに戦いを仕掛けたのだろう。
勝ち取っていないボスの座は本物ではない。
自分は本物のボスではない。
そういう苛立ちが、クロに横暴な振る舞いを
させたのかもしれない。
偉そうにすることでしか、自分の地位を
確かめることができなかったのだ。
シャムに破れてボスの座を失ったクロは、
しょげかえるどころか、むしろ安心したように見えた。
落ち着いて行動することができるようになり、
トラニャがケンカをしかけてきても
余裕を持った大人の対応ができるようになった。
身を低くしてうなり声をあげるトラニャに
ついと寄って頭をペロリとなめたことがあった。
そのときトラニャは毒気を抜かれて戦意を失った。
それまでは、トラニャが挑戦してきたら
いきりたって受けるだけだったのだが。
クロは、負けることによって成長することが
できたように思う。