人が病気になると猫は(2) | いきなり猫三匹と暮らす

いきなり猫三匹と暮らす

突如襲来した怪生物と犬好きのハートフルコメディ

激しく嘔吐した後、ベッドに倒れ込んだわたしに、
一匹の猫が近づいてきた。トラニャだ。
アニャッ、と子猫のような甘え声で近づいてくる。

トラニャは、ちょうど扇風機の風をさえぎる位置で止まった。
角度をうまくセットできなかったためにかろうじて
わたしに届いていた風はみごとに止められた。

‥‥ト、トラニャ‥‥熱で苦しいんだ。暑いんだ。

心の中でそう思ったが、トラニャに言ってもしかたない。
いつものように撫でてもらえると思って来たトラニャに罪はない。

吐いてぶっ倒れたのを見ていて病気だと分からないのか?

トラニャに分からなくても仕方ない。
たぶんこいつは病気をしたことがない。

トラニャはゴロゴロ言いながら体を密着させてきた。
ああ、熱い。ますます暑い。

ごめんね、トラニャ‥‥
トラニャの背中を撫でながら、わたしは意識を失った。

夜中、ふと目を覚ますと、
シャムが心配そうにわたしの顔をのぞき込んでいた。
枕に手をちょんと置いて、香箱を組む姿勢でうずくまって
じっとわたしの顔を見ている。

ふだんはこんなことはしない。
わたしの変調がシャムには分かったようだ。

ああシャム、お前はお利口だね--

むかつきはほとんど収まっていた。
何時か分からないが、もう少し寝よう。

朝、トラニャとクロの鳴き声で目が覚めた。
時計をみると5時前。いつもの時間。
何があっても猫の餌やりとトイレ掃除は欠かせない。
(こんな時に限って自動清掃トイレが故障だ)

ゆっくりと身を起こしてみる。
まだ頼りないが、昨晩からするとずっとましになった。
不確かな足取りで猫の餌場に行ってみると、
ドライフードがたくさん残っていた。
そういえば、昨晩いっぱい出しておいたんだった。

トラニャ、クロ、君たちは「腹が減った」と鳴いていたのではなく、
「肉よこせ」と鳴いていたのだね(笑)。


いきなり猫三匹と暮らす
だいじょうぶですか?


いきなり猫三匹と暮らす
どうしてブラシかけてくれないの?
食事の支度も遅いよ?
いつももっと撫でてくれるよね?

いきなり猫三匹と暮らす
なでてくれないニャー。
名前よんでくれないニャー。
話しかけてくれないニャー。
冷たいニャー。


人間の事情は猫には通じない。
人間の都合を猫に押しつけてはならない。

確かにその通り。
ごめんよ、猫ども。
けど、どうしようもないときもあるのだ。