ミョウバンの結晶づくりのブログはこれで3本目になりました。
初めてのクロムミョウバンとの混晶です。
以前,ミョウバンの結晶についてのブログに「クロムミョウバンは家では扱えない」
と書いたのですが,
ダイソー チャレンジSCIENCE!のシリーズに
"ミョウバンで紫結晶をつくろう!"がありました。
これは楽しみと購入(2箱も)
(ブログも編集しています。)
開けて見るとカリミョウバン30gとクロムミョウバン4gと
作り方,結晶を結ぶテグスが入っていました。(これで1箱分)
実験方法
初めて作る場合にも対応できるように一部書き替えました(2022.1)
種結晶を準備する。
・水100mLにカリミョウバン30,クロムミョウバン2gを
大きめのガラス容器に入れラップをかけてレンジで温めて溶かします。
(キットに指示されていた濃度と同じですが,量を倍にしています。)
緩衝材にくるんで室温までゆっくり冷やし,きれいな結晶を取り出します。
大きさが大きいものよりも,形がよいものを選ぶののがコツです。
これをテグスで結ぶか,熱したワイヤーに刺すなどして
(写真はこれまでに作り溜めてある普通のミョウバンの種結のものです。)
大きな結晶を作る。
種結晶を作った残りの水溶液を温めてすべて溶かします。
50℃まで温度が下がったら結晶をつくる器に上澄みを移して種結晶をつるし
緩衝材でくるみ,1日以上ゆっくり冷やします。
プラ容器を使う場合は温度が高いと変形する場合があるので注意。
クロムミョウバンは紫ですが,水溶液は深緑色です。
Cr3+の色かな?
結晶が出てきても水溶液の色が全く変わっていない…
ですが,薄い紫の結晶が得られました。とても綺麗です。
普通のミョウバン結晶より,透明度が高いような
クリスタルガラスのようなキラキラした感じを受けます。
気は遣いますが,感動しています~
条件を変えてみた。
種結晶も今回の母液でできたものを使い,
残っているクロムを段階的に足しながら結晶を作りを続けました。
だんだん色が濃くなっています。たまに綺麗にできています
温度の条件も変えてみました。
左端の大きいものは1日置いた後,氷を入れたコップを
保温ボックス内に入れてさらに冷やしたもの。
冷やすと各段に析出量が増えるようで2.5cmくらいまで成長しました。
八面体にいろいろくっついた,面白いものが出来ました。
小さな結晶もきちんとそろばん型→▲に成長するので
きれいなものを取り出してはコレクションしています。
水溶液が少なくなってきたので残りは水分を蒸発させて,
最後は群晶のような,オブジェができないかと期待しています。
数か月後くらいかな。次号へ続く。
実験くんシリーズにクロムミョウバンがありました。
実験の際の注意点
レンジで温める場合は,母液や湯気が飛ばないように
十分な注意が必要です。
温度計やピンセットなど使ったものは,拭き取り専用の古布を用意して
置き場所も決めて,管理しました。
熟成させる場所は
長期間放置しても安全(誤飲の恐れがない,誤って手が触れない)
温度変化が少ない(直射日光が当たらない)
振動しない,水溶液がこぼれず安静に放置できる
…ところを選んでください。
安全に結晶を作る時に必要な情報集め
1.物質の安全性
ミョウバンというのは硫酸塩の複塩で1価の陽イオンと
3価の陽イオンの組み合わせでいろいろな種類があります。
今回使うカリミョウバン(カリウム・アルミニウムミョウバン)は
結晶づくりではおなじみの物質です。
クロムミョウバンについてはインターネットで探しても
あまり情報がありませんでしたが,わかったものを表にしてみました。
アルミ と クロムの安全性について
クロムはめっきや,ステンレスとして使われています。
化合物としてのクロムは+2(青),+3(緑),+6(黄,橙)の酸化数を取り,
6価のクロム(クロム酸)が強い酸化剤としてはたらき毒性が高い物質です。
ミョウバンに含まれるクロム(+3)は
皮膚への刺激性などの記述がありました。
(廃液など詳しくは後述※1アルミニウムについては※2)
2.物質の溶解度
アンモニウム・クロムみょうばんの溶解度が
インターネットで紹介されていました。
アルミのミョウバンではカリウムとアンモニウムの溶解度の違いは
ほとんどなかったので,これでクロムミョウバンの溶解度を考えても
大丈夫かな?と思いました。データはこちらから拝借しました。ありがとうございます。
12水和物に計算し直すとこんなグラフになります。(解説は後述)
クロムミョウバンの溶解度にびっくり。
溶解度の表からはクロムミョウバンは析出しませんが
同じ結晶構造をとるカリミョウバンと「混晶」という形で析出するそうです。
…
(※1クロム廃液)作り方には「廃棄の際には各地方自治体の廃棄区分に
従ってください」とありました。水溶液を生態系に流してしまうと拡散過程で
酸化されて6価になる可能性があるそうです。
(※2アルミニウム)カリミョウバンについては漬け物の色をよくするなど
食用として市販されている製品もあります。
今回は食用でないのでほぼ関係はありませんが,食用とする場合は
体重1kg、一週間当たり、2mgという数値があります。
(ミョウバンは水溶液中で弱酸性なので,ベーキングパウダーの
発泡の調整に使われていましたが,アルミニウムを含むことから,
最近の多くのベーキングパウダーは「アルミフリー」となり,別の酸性物質が使われています。)
参考:溶解度の計算方法
水和物を溶かす場合は,水和水として一緒に水も増えます。
例えばカリミョウバン12水和物を30gに含まれているカリミョウバンは16.4g分。あとは水なので
下の図のような水溶液になります。
100gの水に換算すると14.4gの水溶液にしかなっていません。
逆に焼きミョウバンのように水和水がないものを結晶化させる場合は
水和水として水も析出します。60℃の飽和水溶液だとこのようになります。