治療開始時にはかなり胸水がたまっているのが確認された。胸部レントゲンではっきりわかるレベルだった。特に胸水に伴う症状が出ているわけでもなかったが、最初の入院の際「胸水を抜いてから退院」ということになった。
胸腔穿刺と言って、超音波エコーで胸水の位置を確認して、背中から中空の針を刺して水を抜くのだ。結構な勢いで出ていたが、結局1リットル余りを抜いた。ふつうなら黄色っぽい液体なのにロゼワインのようなピンク色をしていた。医師は「赤いのはあまりよくない」という言い方だった。
そして胸水の細胞診の結果、肺のがん細胞と同じがん細胞が検出され「悪性胸水」だということになった。
肺は二重の胸膜(壁側胸膜と臓側胸膜)で守られていて、胸膜の間には少量の液体が存在して肺の動きに伴う摩擦を回避(潤滑)しているが、バランスが崩れて必要以上に貯留してしまうのが胸水だ。
私の場合は原発巣のある肺野のがんが胸膜に転移して、胸水が増えていると思われる。
しかし胸膜転移をCTなどの画像で見せられた覚えはない。おそらくはっきり影が見えるほどではないのだろう。がん細胞が胸膜にまき散らされるような転移を胸膜播種というが、この場合は画像でも分かるらしく、私の場合は違うだろう。
しかし半年後の胸腔穿刺ではがん細胞は検出されなかった。そして1年目の胸腔穿刺でも検出されなかった。つまり「悪性胸水」はただの「胸水」に変わったのだろうか?でも胸水が今でもたまっているのは胸膜のがんは治っていないということになるのだろう。
胸水は胸痛や呼吸困難という症状が出ることが多いらしいが、私にはそういう兆候はない。一定量増えるとそこでバランスして、あまり圧迫していないのかもしれない。X線で見る胸水は抜いた直後以外はいつも同じように見える。症状が著しく慢性または再発しやすい場合は「胸膜癒着術」を受けるのがお薦めらしい・・・が主治医がそんな話を出したことはない。
主治医は「胸水が増えるような場合は胸腔鏡検査をやろう」と言っている。まぁとにかく原因(薬剤耐性が起きていないか)を調べる必要があるということだろう。