
図は薬剤耐性がない場合に、みかけのがん細胞が増えも減りもしないというモデルを示している。もちろんデータの形状から推定した仮説であって、医学的な根拠はあまりない。
実は初期の気管支鏡検査で医師からこう説明された。「最初に(つまりあまり深くないところで)採取した組織にがん細胞は検出されなかったが、肺野の奥で採取した組織にはがん細胞が検出された」「検出されたがん細胞を分析したところEGFR遺伝子変異陽性だった」と・・・つまり白いもやもやが画像で確認され、気管支鏡でその部分を黙視しながら採取しても、それは必ずしもがん細胞ではないのだ。
このモデルは「がん(悪性腫瘍)の発病、進行過程で非悪性腫瘍ができる」という仮説に基づくものである。治療開始時点の悪性腫瘍の相対量を1とした場合、非悪性腫瘍の相対量は0.5とし、悪性腫瘍の8割は非悪性腫瘍と重なっていると仮定した。
分子標的薬の服用により、1年に3分の1の比率で悪性腫瘍が小さくなる(青線)というのは前の仮説と同じである。一方、非悪性腫瘍は服用によって減ることはない(赤線)。腫瘍総量(CT画像で観察されるもやもや部分の相対量)は青線に漸近する形で減少するが、さらには赤線に漸近する形で減少することになる(緑線)。徐々に減っているとはいえ、画像から推定する見た目の腫瘍総量はほぼ一定になるわけで、現在の私の状況を説明できるモデルである。
この仮説が正しければ、私の肺腺がんには薬物耐性は起きておらず、悪性腫瘍は減少しているということになる。もちろん非常に楽観的な仮説であるというのが前提ではあるが・・・一方、悪性腫瘍が非悪性腫瘍の陰に隠れてしまっていること、腫瘍マーカーがずっと陰性であるということから、「治療効果が分からない」という悲観的要素もある。
だからいずれ胸腔鏡検査が必要になることは確かだ。