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前にも述べたが薬剤耐性とはインフルエンザの細菌などとは異なり、特定の変異のある遺伝子が薬剤の服用に伴って形を変えて耐性を持つものではない。
ひとたび薬が効いた変異遺伝子は同じ薬でずっと効くと言ってよい。
私の場合、EGFR遺伝子変異陽性だが、さらに細かく言うとエクソン21L868R遺伝子変異陽性である。このタイプは今私が服用しているジオトリフがよく効くと言われる。
しかしジオトリフはエクソン20点突然変異(別名T790M変異)陽性には効き目がない。この変異は治療開始時にはほとんど検出されないが、微量であっても急激に増殖していく。増殖のしかたには個人差がある。
 
薬の効き目は等比級数的であると仮定する。一方、増殖も等比級数的であると仮定する。ある期間にがん細胞が半分になれば、その倍の期間で4分の1に、3倍の期間では8分の1になる一方、ある期間で倍になれば、2倍の期間で4倍に、3倍の期間で8倍になる・・・これが等比級数である。

今回は「薬の効くがん細胞(エクソン21)は1年で3分の1に減る」ものであり、「薬の効かないがん細胞(エクソン20)は半年で3倍に増える」ものと仮定した。図において青い曲線は「薬が効いてがん細胞が減少している様子」を示しており、赤い曲線は「薬の効かないがん細胞が増加している様子」を示している。緑の曲線は赤と青の和すなわちがん細胞総量を示している。
 
がん細胞総量は当初減少(これを寛解と言う)し、ある時から増加(これを増悪と言う)に転じる。このモデルでは治療開始1年弱で極小(がん細胞が増えも減りもしない)期間を迎えていて、ちょうど私のCT画像で観察される「白い点やもやもやの減少傾向」と似ている。ジオトリフの薬剤耐性は平均1年前後で顕在化するとされる。
 
したがって主治医は薬剤耐性を疑って、胸水の細胞診を試みたのだ。
しかし、胸水にはエクソン20はおろかいかなるがん細胞も検出されなかった。
 
これは「たまたま胸水にがん細胞が排出されなかった」だけなのか「別の薬剤耐性モデルを想定すべき」なのか・・・次回に別モデルについて考察する。