ヒップホップグループ「ET-KING」のリーダー「いときん」が1月31日死去した。
彼は昨年5月に肺腺がんステージ4が発覚・・8月にはリンパ節だけではなく脳にも転移していることを公表し、治療を行ってきた。
昨年末には5カ月ぶりにステージに復活し元気な姿を見せていた矢先の急逝である。
 
報道によれば直接の死因は「がん性心膜炎」だという。肺がんは(乳がんや食道がんなども)「心膜」に転移することがあるという。これによって心嚢液が貯留し心膜腔内圧の上昇をきたし、心拍出量が維持できない状態「心タンポナーデ」になるらしい。症状が出た時は手遅れであることが多く、長くても2,3カ月の命と思われる。・・そう、彼は今年に入って心タンポナーデになったのであろう。
 
彼がこれまでどんな治療を受けてきたのかはよくわからない。脳転移があるということでかなり厳しい状態だということは知られていたが・・。当時私は自分の主治医に脳転移のことを尋ねたことがある。主治医によると「脳転移の治療は難しい」ということだった。骨転移の場合は分子標的薬が骨に届いてがん細胞増殖を抑制することができるが、脳には届きにくいのだという。当然脳という場所の特性上手術は困難である。それでも分子標的薬が適合するなら心膜への転移を止めることもできたのではないかと思うのだが・・
 
当時彼は「治療法を選択して治療に専念する」と言っていた。がん発見後3カ月経っているのに治療法が確定していないか選択の余地があるというのは・・「適合する分子標的薬がない」ということを意味するものだったかもしれない。適合する薬がない場合は1年以内に死ぬ可能性が大きい・・ということだ。
 
ところで同じ肺腺がんステージ4の大林宣彦監督は1年半経過した今も元気そうだ。彼の場合も脳転移の恐れありとされていたが、恐れにとどまったのか放射線が効いたのか・・・。最近のニュースでは分子標的薬であるイレッサを服用しているらしい。1年以上生きていられるのは分子標的薬のおかげだ。