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前回は抗がん剤がまだまだ進歩していない2000年以前のデータに基づく生存率曲線について述べた。今回は治療法特に薬の進歩がもたらす延命効果の可視化・定量化について考察する。
グラフの左端は前回示したグラフ(2000年生存率曲線)だが時間軸を4倍にしてある。
2000年データでの50%生存は6か月時点であることを示している。これは前述したように薬が効く患者群と聞かない患者群の生存率を合成したものである。50%生存に着目すると、薬が効かない患者群の生存期間は4.5か月、効く患者群のそれは9が月である。この差4.5か月が当時の抗がん剤の延命効果であると言える。
 
今世の中で使われている生存率は全がん協の2004年から2007年の症例に基づくものである。肺腺がんステージ4の5年生存率を丸めて5%として、このポイントと0か月100%のポイントを直線で結んだものが左から2番目の線である。これを2007年生存率曲線と名付けておく。この直線は1年81%のポイントを通っており、伝えられている1年生存率とほぼ一致するので、曲線は直線的であるとしてよいだろう。
2000年生存率曲線と2007年生存率曲線の生存率50%になるポイントの期間の差は約26か月(6か月から32か月への延伸)である。すなわち7年間の治療方法主に抗がん剤の進歩が2年余りの延命効果をもたらしたということになるのだ。
 
一番右側の線は、2007年から2014年の間にその前の7年かと同程度の治療法の進歩があったと仮定して描いたものである(2014年生存率曲線予測)。2014年までに肺腺がんの治療薬としては画期的な分子標的薬2種(イレッサ・タルセバ)が承認されている。2014年生存率曲線はデータに基づくものではなく全く感覚的なものだが、新薬の著しい進歩はこの程度の効果をもたらすとみてもおかしくはないだろう。
50%生存のポイントで26か月の延命効果が得られれば、2014年生存率曲線では58か月・・・つまり半分の人は約5年以上生きるということになるのだ。
 
もう一つ見逃せない事実がある。簡略化したグラフでは曲線(直線)は時間軸と交わっている。これは期間が経過すれば必ず死ぬということだが、実際はそうじゃない。5年も効果のある薬を服用していれば完治することもあるからだ。つまり一つの薬だけでは薬剤耐性があって完治に至るのは難しいが、複数適用できれば完治の可能性が高まるということなのである。
 
因みに私は2014年承認の第二世代分子標的薬(ジオトリフ)を飲んでいるんで、もっと右側の曲線に乗るかもしれない。だからと言って楽観はできないけどね・・・自分に合う薬がどれだけあるのかは未知数だから・・・。