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前回、生存率曲線(治療開始後所定期間後の生存率グラフ)の話をしたが、これをもう少し理論化する試みを行う。
 
まず2000年以前のある病院の治療実績に基づく生存率をベースにする。要点としては「6か月以上生存するのは50%である(裏返せば50%は6カ月で死ぬ)」「18カ月以上生きた者はいない(18カ月で全員死ぬ)」「その間の生存率の推移はほぼリニアである(級数的ではない)」ということであった。
ただしリニアと言っても1本の直線で近似するのは難しく、2本の直線(折れ線)で近似する必要がある。
 
図によって説明する。
折れ線になるのは「ほとんど薬が効かない患者群A」と「期間は限られているが薬が効く患者群B」が混在しているためと仮定した。
まず6カ月で50%のポイントを定める。AとBの患者数が等しいと仮定する。18カ月近く生存するのはBである。したがって0か月100%の点と18カ月0%の点を結べば、患者群Bの生存率曲線(直線)となる。
Bの直線の6か月ポイントは67.5%であるから、Aの6か月ポイントは32.5%でなければならない。AとBの平均が50%にならなければならないから・・・
Aの直線を伸ばせばは9か月で0%になる。これは薬が効かない患者は4.5か月で半分死に、9か月で全員死ぬことを意味する。余命が0カ月から9カ月にばらつくのは種々要因による。たとえば治療開始時期のバラつきがあることが考えられる。このバラツキはリニアに分布するとしてよいだろう。ほかに患者の(肉体的・精神的)抵抗力などがバラツキ要因となる。ステージ4が「末期」と言われた理由がここにある。治療法がなければ9か月以内に確実に死ぬのだから・・・。やみくもに治療して苦しむより夫婦で思い出旅行に行くほうがいいということになる。
A群患者がいなくなると直線の傾きが変わるので、AとBの合成は9か月25%で折れ曲がることになる。効く薬があっても薬剤耐性があって効く期間は限られている。だからAの患者の半分が死んだ4.5か月に遅れて9か月目にはB群患者も50%が死に、18か月目には全員が死んでしまう。効く薬であっても完治を実現するものではなく延命するにすぎないのだ。これでもまだ「末期」と言ってもよいだろう。
 
次回は新薬の開発がもたらす余命の延長について考察する。