最近テレビや新聞で「ゲノム医療」の報道がよく見られる。入院中に医師に尋ねてみたが「ゲノム?民間療法の一種?」という感じで話がかみ合わない。どうやら医師や医学の世界では「ゲノム医療」はまだ俗語のようだ。遺伝子工学から流入してきたのかな? 最近は生物学や工学でもがんの研究が盛んになっている。
 
ゲノムはドイツ語のGenomで分子生物学用語らしい(医学用語ではない)。Genomとは「ある生物種を規定する遺伝子情報全体」のことである。「ヒトのゲノムが解明できた」などという風に使われる。医学界での用語使用は限定されているが厚生労働省が設けた「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」が「(がんゲノム)情報管理センター」の設立を提言している。
 
6月27日の読売新聞記事はよく読むと見出しなどには「ゲノム」の文字が躍るが、中身は「次世代シーケンサー」の話である。次世代シーケンサーは100種類以上のがんの増殖にかかわる遺伝子を一度に調べられるというものである。これまではターゲットを推定して個別の遺伝子検査を行い特定していたので、ターゲットを推定しにくい患者の場合はお金も手間もべらぼうにかかることから「遺伝子変異見つからず」ということもあった。100種程度ではヒトの遺伝子すべてではないので、「ゲノム医療」のゲノムは便宜的に借用されたものであろう。
 
次世代シーケンサーでも40万円から100万円くらいかかるらしく保険適用になってもみんながこれをやったら健康保険が破たんしてしまう。だから対象者は非常に限定されることになるだろう。ちなみに私の場合はEGFR遺伝子変異が早く見つかったのでシーケンサーを必要としないケースだろう。それでも保険適用で数万円払った・・。
 
池上彰がテレビで「ゲノム医療によってがん細胞が劇的に小さくなった」ようなことを言っていたが、これは明らかに間違いである(編集の結果かもしれないが)。なぜならゲノム医療は(がんにかかわる)遺伝子情報を一括して検査して治療につなげるものであって、治療そのものではない。治療法はそれぞれのがん部位や遺伝子編情報に基づいて開発され、適用されている(もちろん未開発のものもある)。私の場合はEGFR遺伝子を狙い撃ちする分子標的薬投与である。
 
次世代シーケンサーはこれまで見捨てられてきたあるいはあきらめてきていた難解ながん患者にとっての朗報なのである。