最近発表された東京五輪のエンブレム(ロゴマーク)が既存のマークに似ていると話題になっている。
しかし多くの報道は「商標権」と「著作権」を明快に区別しておらず、メディアの勉強不足は相変わらずである、メディアは騒ぎが好きなだけの愚か者なのだから・・・。
 
さて今回のようないわゆる「デザイン」には「著作権」と「商標権」が発生しうる。
「著作権」が著作したとたんに発生するもので届出や申請は一切必要がなく、著作者(この場合はデザイナー)において発生する。使用国や利用分野は関係ない。
「商標権」は出願して許可を得なければならず、著作者ではなく出願人(同一の場合もあるが)において発生する。権利は出願した国に限定され、出願した分野(食品や自動車など)に限定されるが「著作権」より強固な権利である。。
 
今回の問題となっているベルギーの劇場のロゴは「商標権」として出願も登録もされていないらしい。そうであれば「商標権」の侵害を訴えることはできないので、劇場側は沈黙してる。
 
従って今回は「ベルギーのデザイナーが著作権のの侵害」を訴えているとみなされる。ここから先当事者間の示談が成立しなければ裁判での決着となる。
 
著作権で争うとなると著作者側は結構大変である。「明らかにまねであるあるいは盗用である」ことを立証しなければならない。つまり「相手の著作者が真似などしていない」ということを論破せねば(突き崩さねば)ならないのである。99%一致すればほかに証拠はなくても著作権侵害を立証することはできる。しかし似ているという程度では立証できない。もちろんオリンピックロゴのデザイナーが提出したメモリーにベルギーの劇場のロゴが保存されているなどということがあれば立派な物証になる。
 
「商標権」では「知らなかった」「見たこともない」が通じない(ちゃんと調べなかったのがいけない)が「著作権」ではが「知らなかった」ということが反論方法として通じるのだ。
 
従って今回の騒動ではベルギーの劇場のロゴのデザイナーにはあまり勝ち目はないように思われる。しかし騒ぎを起こせば有名になれるというメリットがある。つまり「騒ぎを起こされたら困る」という側にはデメリットなのだ。もちろん「有名」は「悪名」になる場合もあるから「両刃の剣」ではある。どういう決着を見るかは世論も無関係ではなかろう。そのためにも丁寧な報道が望まれる。