少年は寂しかったから


だから
 

言ったんだ
 

「狼が来るぞ」って



少年は誰かに相手して欲しかった
 

だから
 

叫んだんだ
 

「狼が来るぞ」って



少年は誰かに褒めて欲しかっただけだった
 

ただそれだけで
 

「狼が来るぞ」って



誰も未来はわからないはずなのに
 

嘘つき呼ばわりされても
 

少年は叫び続けたんだ
 

「狼が来るぞ」って



そんなことを繰り返しているうちに
 

少年の言葉は
 

誰にも真に受けてもらえなくなった
 

「狼が来るぞ」って


 

でも
 

みんなも息をするように
 

だまし合いをしているのに
 

少年だけが責められる
 

「狼が来るぞ」って



いや
 

最初から誰もがわかっていたはずなんだ
 

なのに
 

その少年だけを責められるというのか
 

「狼が来るぞ」って


 

誰もその少年がそんなことを言い続けるのか
 

考えもしない
 

だから
 

少年は意地を張るように
 

「狼が来るぞ」って



誰にももう相手にされなくなっていても
 

少年にはその言葉しか持っていないから
 

そう言うしかないんだ
 

「狼が来るぞ」って



少年には他の言葉を教えてもらっていないから
 

だから
 

その言葉が頼りなんだ
 

「狼が来るぞ」って



だから
 

もう誰にも相手にされないとわかっていても
 

言い続けるしかないんだ
 

「狼が来るぞ」って



振り絞るように
 

今でも街に向かって言っている
 

「狼が来るぞ」って



今日も少年は街に向かって
 

小さくささやいている
 

「狼が来るぞ」って
 

寂しく
 

「狼が来るぞ」って