誰もいずとも雨は降る

誰も見ずとも花は咲く

誰も踏まずも雪は積み

誰に知られず月は満ち欠け

誰の頬も打たずに風は流れ

誰に看取られぬまま消えていく



獣が呻(うめ)き

魚が抜(ぬ)い

虫が湧き

鳥が嘶(いなな)く



名がないと育たぬ木はなく

過去に残るさえずりはない

ひとつしかない太陽の呼び名を変わっても

星は夜でなくとも瞬いており

未来を占うことはない

足跡は足音の証しにはならず

やがて誰もいなくなっても

この地は回っていく

知らぬ間に終(つい)えた身は解(ほど)けていく



流れる雲に同じものはないと

寄せ返す波に同じものはないと

人だけが思えど

繰り返す違う命の営みが

身の丈の皮を残す

その傍らに

虫の亡骸すら土に還せぬ世に

誰がしたのか

誰の価値があるのか

誰に価値があるというのか

解せぬ問いが積み上がる