あの日あなたが見た空は青かったですか
 

あの日の空をきっと見たはずなのに
 

空は静かに黙っている
 

あの日は空を見上げていたはずだった
 

噴き上げる煙で汚されていく空を
 

けれど
 

あの日の空を知る人はもういない
 

あの日の空のことを覚えている人はいない
 

何もかも知っている空は教えてくれない
 

すべてを見ていた空は
 

いつも何も語ってはくれない



あの日あなたが見た海は蒼かったですか
 

目の前に広がる海はきっと聞いたはずなのに
 

潮の流れが飲み込んでいく
 

あの日の海は聞いていたはずだった
 

海はうめき泣いている声に気をとられたのか
 

けれど
 

あの日の海を知る人はもういない
 

あの日の海のことを覚えている人はいない
 

何もかも聞いていた海は教えてくれない
 

すべてを聞いていた海は
 

今は穏やかに空を映しているだけの海に変わっている



あの日空にはどんな雲は広がっていましたか
 

あの日の雲をきっと見ていたはずなのに
 

いまはもう散ってしまった
 

あの日も雲を見たはずだった
 

赤い炎に包まれて見えなくなっていたのか
 

けれど
 

あの日の雲を知る人はもういない
 

あの日の雲のことを覚えている人はいない
 

何もかも知っている雲はとっくにちりぢりに
 

すべてを知る雲はもうどこにもいない



あの空は青かったですか
 

あの日の空は晴れていましたか
 

今見上げる空と変わりがなくとも