宮城県石巻市。漁港の近くにある、練り製品の老舗、高橋徳治商店。震災前まで、社員80人、2つの工場が稼働していた。
3・11の地震の後の津波で、海に近い第二工場は壊滅的被害、それよりは陸側の本社工場も津波にのまれ、建物外観は保っているものの、工場内にも容赦なく津波が押し寄せ、後には床上15cmほどのヘドロが、黒い雪のように残った。雪ではないので、溶けることなく。
3月31日で80人ほどの社員は全員解雇された。工場も、製造機械も全てダメになり、するべき仕事は何もなかった。
第二工場は手がつけられないが、本社工場のヘドロは出そう、と、全国各地から縁のある人々がやってきて、スコップで一杯ずつ、ヘドロを掻き出した。機械の隙間まで入り込んだヘドロには、手のひらにヘドロをのせて。電気は無く、各自のヘッドランプと、工場内に響き渡るエンジン音の発電機で点灯する投光器の灯りが頼り。カッパを来て作業、ヘドロでドロドロになったカッパは、地盤沈下で満潮時、工場前まで溢れてくる海水で洗った。カッパは着ていたが、ガンジス川の沐浴のようだったかもしれない。
3月末以降の半年間、関係者、そしてピースボートのボランティアの人々、のべ千人あまりが工場の再生に取り組んだ。
そして10月1日、「おとうふ揚げ」という製品を作る1ラインが、再生された。
80人いた社員のうち、15人が戻ってこれた。
「おとうふ揚げ」とは原料の豆腐に魚のすり身などを加え、油で揚げた、たこ焼きほどの玉。そのままツマミとしても、鍋や煮物にもいける逸品。
何よりその、おとうふ揚げ1粒1粒の中に、震災からの復興の思いが詰まっている。製品第一号を頂いたが、詰まっている思いで硬い訳ではなく、豆腐やすり身の甘味、旨みが心に染みた。揚げたてはふわっと柔らかかった。

ここからまた、新しい復興の物語がひとつ、始まる。






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