虹の戦士 第2章「Lonely Runner」11 | sunada3216の書きものブログ

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(勇悟、元気出しなよ)
 搭乗時刻も近付いた空港で、ロックはうつむいて黙り込んでいる勇悟に、テレパシーで話しかけた。爆破事件以来警備が厳重になったが、やぱり旅行客で混雑している出発ロビーだ。
(二人とも初めて互いに理解し合える異性と出会ったものだから、その嬉しさを愛情と思い込んでしまったんだよ。しかも初めての恋で、盲目に会いに溺れようとして、傷ついてしまったんだ。誰が悪いわけでもないよ)
 一生懸命慰める足もとの子犬に、勇悟はそっと笑いかけた。
(ありがとう、ロック)
 場内に搭乗を急ぐようにと、アナウンスが流れていた。
(行こうか・・・)
 勇悟が歩き始めた。
 ロックはその背中を、まるで暗くさびしい道を、一人で駆けて行くランナーのようだと感じた。
 そのとき一人の日本人の男が歌を口ずさみながら、とぼとぼと歩く彼らの横を足早に過ぎていった。

 燃え尽きて落ちる家屋に
 手向けとばかり花添えて
 踏みしめる小道の傍らに
 菫の香りほのかに

  なぜ傷ついても
  君一人耐え忍ぶ

 Lonely way 駆けていくRunner
 誰も誰も 止めることはできない

 ロックが勇悟の顔を見上げた。一晩中何と声をかけようか悩んで、疲れ切った顔だった。
 勇悟はそれまで浮かべていたさびしげな表情を消し、やさしい笑顔でロックを抱き上げた。
(さようなら、合衆国。さようなら、ハニー・・・)
 彼らは一緒に心の中でつぶやいていた。
(さようなら、ジョン。さようなら、夢のような思い出たち)
 やがて飛行機は、彼らを乗せて晴れた空へ飛び立った。

 色あせて朽ちる写真に
 面影いつも抱きしめて
 ふるさとの親しい人影に
 さらばと背中を見せて

  呼ぶ人も無いが
  君は立ち止まらない

 Lonely way 駆けていくRunner
 誰も誰も 止めることはできない・・・

Fin.