屈折した3人の青年が過剰な自意識に絡め取られ苦悩・挫折する物語。主人公は日本人で、あとの二人は在日朝鮮人と日本人と黒人のハーフ。彼ら3人は同性愛者という噂のあるアメリカ兵の家に下宿する。空虚な理想と、残酷な現実に内なる悲鳴が全編を満たしていている。ラストは僕も心のなかで悲鳴を上げた。とにかく密度が濃い。
グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
posted with amazlet at 10.10.24
飛 浩隆
早川書房
売り上げランキング: 45327
早川書房
売り上げランキング: 45327
娯楽のためにつくられた仮想世界に暮らすAIたち。夏の行楽地として設定された小さな港町。かつてはゲスト(人間)が数多く訪れたが、ある日突然誰もこなくなり1000年の歳月が流れる。誰も年を取ることなく、延々に続くヴァカンスでの日々が、ある日突然舞い降りてきた「蜘蛛」たちによって一日にして破壊され壊滅するというSF小説。スピード感のある展開、迫真の攻防、人間よりも人間的なAIたちの苦悩。シリーズ一作目ということでいくつかの謎を残しながらも、人工の世界であるという設定を小説として最大級に利用した重厚な読後感が味わえる。
拾った携帯にかかってきた電話に、なりゆきでオレオレ詐欺をしたことが発端になり、自分が「俺」になってしまう。というか自分と「俺」が同じことに気づく。やがて何人もの「俺」と出会い、世界は混沌としてくる。自分とは何かというアイデンティティの問題を、自分と他者との差異を無効化していくことで問い詰めていくという荒業。ここではお互いが同じ自分でありながらも、それぞれの関係性という立場に釘付けにされ、共感と排除で埋め尽くされていく。どこまでも不快な空気が蔓延するなか、その原因が「俺」であるという残酷さに、打ちのめされクラクラする。
病的な妄想日記のような不思議な世界。全体としてのストーリーは無く、近所の運動会の光景、地方の芸術祭に観光といった日常がグロテスクに歪んだ模様で塗り潰されていく。だが、このネガティブな方向へ全力疾走するような潔さは逆に清々しくもあって、僕は小川洋子の熱心な読者ではないけれど、この小説は僕の心を鷲掴みにした。ぜひ続編も!
三島賞&川端賞のW受賞作。両親の死に対する罪悪感に悩まされ、現実が崩れ落ち世界が異様に変貌していく「不意の償い」、カブトムシの意識を人間的に描写して、ひとり取り残され蛹のまま成長できない嘆きを綴った「蛹」、過去の因縁により家の裏の教会を激しく憎悪しながら孫娘と暮らす老女を描いた「切れた鎖」の三篇を収録。屈折した親子関係に苦しみ、社会から疎外され孤独に陥る主人公たち。その激しい内面の葛藤が克明に描かれる。鎖という言葉が象徴的だ。主人公たちは、誰もが家族という存在によって深く傷を負い、その傷によって心を縛られ現実世界で身動きできなくなっていく。その悲痛な叫び声があらゆるページから聞こえてくるかのようだ。




