『日本の難点』宮台真司/幻冬舎新書 | 砂場

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日本の難点 (幻冬舎新書)
宮台 真司
幻冬舎
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ひとりで「日本の論点」を全部語ってしまうという内容。コミュニケーション論・メディア論、若者論・教育論、幸福論、米国論、日本論という章立てで、ケータイ小説からいじめ、ゆとり教育、早期教育、宗教、自殺率、セクハラ、オバマ大統領、対米追従、米軍基地、金融資本主義、後期高齢者医療制度、裁判員制度、環境問題、秋葉原事件、格差社会、民主主義、エリート、農業などなど、現在の日本が抱えている主要な社会・政治問題を分析していく。

複雑な問題を、一刀両断していくさまは宮台の本領発揮で気持ちいい。だが、実際のところ、宮台が言っていることが正しいのか専門家でも無いので僕には分からなくて、それよりも、こんな風にあらゆる問題に対して即答てきる宮台とはいったい何者なのかが気になってしまう。『ニッポンの思想』で佐々木敦は宮台真司に対してこう説明している。

対談やトークにおける宮台は、「八〇年代」の浅田彰、「ゼロ年代」の東浩紀と並ぶ、瞬間解答マシンのようなクレヴァーぶりを露骨なまでに誇示します。「それは簡単に説明できます」「それはすべてわかっています」「それは最初から織り込み済みです」などといった意味の台詞が、彼の発言には頻出します。そして実際、彼は本当に何もかもが瞬時に「わかって」しまうのでしょう。
『ニッポンの思想』佐々木敦 P219


それぞれの専門化たちが取り組むテーマをたった一人で「瞬間解答マシン」として、答えを導きだしつづける宮台が、「理屈ではない」としているのが、いじめ問題だ。

先生の本気が、生徒たちに「感染」していきます。人の「尊厳」を傷つけ、そのことで「自由」を奪ってしまうのが、なぜいけないのか。それは「理屈」ではありません。(中略)
「ダメなものはダメ」なのです。(中略)「ダメなものはダメ」を伝えられるのは「感染」だけです。(中略)心底スゴイと思える人に出会い、思わず「この人のようになりたい」と感じる「感染」によって、初めて理屈ではなく気持ちが動くのです。
(中略)
想像してほしい。利己的な奴が本当にスゴイ奴だなんてあり得るでしょうか。「感染」を引き起こせるでしょうか。あり得ない。周囲に「感染」を繰り広げる本当にスゴイ奴は、なぜか必ず利他的です。人間は、理由は分からないけれど、そういう人間にしか「感染」を起こさないのです。
P51-P52

そして宮台は本書の最後に、チェ・ゲバラを例として、社会を変革するのは、この「感染」の力だとしている。正論を言うだけでは誰もついてこない。人は、「言葉」ではなく「人」についていく。自ら瞬間解答マシンとして、「言葉」を社会に向けて発信してきた著者が、その「言葉」の力の限界を「わかって」しまったゆえの、当然の帰結なのだろう。


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