『読書について』ショウペンハウエル/岩波文庫 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

読書について 他二篇 (岩波文庫)
ショウペンハウエル
岩波書店
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読書論の本は数年前にけっこう読んだけど、この本は有名なのに読み逃していた。

「反読書」の立場から辛辣な言葉が並ぶ。読書とは著者の思考をたどるだけで、自分の思考を奪う有害なものだと強烈に批判している。読書家の読書には罵詈雑言だが、思想家のする読書はまったく質の違うもので有用だとする。ソクラテスの「文字批判」と同じ思考停止批判の流れにあり、本書の批判は読書批判の王道と言えるだろう。

縦横無尽に様々な角度から切り込んでくる、読書批判の警句の切れ味に感服する。書店員として耳の痛い言葉もあった。そして、シャア・アズナブルがショウペンハウエルの影響下にあったことも判明。

以下、気になった言葉の引用。

紙に書かれた思想は一般に、砂に残った歩行者の足跡以上のものではないのである。歩行者のたどった道は見える。だが歩行者がその途上で何を見たかを知るには、自分の目を用いなければならない。P129

ヘロドトスによると、ペルシアの大王クセルクセスは、雲霞のような大軍をながめながら涙した。百年後には、この全軍のだれ一人として生き残ってはいまいと思ったからである。分厚い図書目録をながめながら泣きたい気持ちに襲われない者がいるだろうか。だれでも、十年もたてば、この中の一冊も生き残ってはいまいという思いにうたれるはずである。P131

文学も日常生活と同じである。どこに向かっても、ただちに、どうにもしようのない人間のくずに行きあたる。彼らはいたるところに群をなして住んでいて、何にでも寄りたかり、すべてを汚す。夏のはえのような連中である。P132

我が国の現在の書籍、著書の大半は、読者のポケットから金を抜き取ること以外に目的がなく、著者と出版社と批評家は、そのために固く手を結んでいる。P132


現実の国では、いかに美しい幸福、快適な生活に恵まれていても我々は常に重力の影響下に動いているにすぎず、たえずこの影響にうちかたなければならない。P20



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