暗い過去を背負った主人公の苦しみを徹底して描きつつも、登場人物の視点の使い分けなど構成が上手いので重いテーマをぐいぐい読ませる。物語の意味が目まぐるしく変わる終盤の怒涛の展開。ラットマンというタイトルも見事だ。ラットマンとは心理学で使われるイラストで、文脈によってネズミにもお爺さんにも見えるように描かれていて、重要な鍵になっている。今年のこのミス3位以内は確実かなと思う。
ダンボール箱をかぶって生活する男ということで、てっきり人間恐怖症・引きこもり的な物語かと思っていたら違っていた。箱の中から世界を見る「覗く」ということがテーマだった。見るのではなく、覗くことによって一変する風景。ただ覗くだけなら、その視界の届く限りしかその変化を感じることができないが、自らダンボールをかぶり穴を開けることによって、世界全体を覗くことができる。だが、自分が覗いていると思っていた箱男は、じつは覗かれる側の存在に入れ替わっていき、読み進めていくほど誰が覗く側で、誰が覗かれる側か分からなくなっていく。そして、箱男を覗いているのは読者である僕であって、ついには読者である僕が小説の中から覗かれているような気分にもなってくるという、なんとも奇妙な実験的小説。
映画化「つぐない」原作。「全ての小説愛好家は読まなければいけない! 奇跡のような傑作。」と帯にあるので、ものすごく期待させられてしまい、こんなにハードルを上げてしまって大丈夫かと思っていたら、余裕で大丈夫という本物の傑作。登場人物、文体、構成、あらゆる要素が素晴らしい。
今さらながら読了。ラノベキャラの新本格推理。僕が10代の頃に読んだらはまったかも知れない。アマゾンのレビューなどを読むと、シリーズが進んで盛り上がっていくようで、この作品はそれほどでもないらしいとのコメントもあった。現在の世界最強文学レベルと言われる小説『贖罪』の次にラノベを代表する作品を読むというのうは貴重な読書経験だった。






