『秋の牢獄』『神家没落』『幻は夜に成長する』の3編が収められている。それぞれ独立した物語だが、そこで描かれている、孤独に捕らわれた絶望感と、そこに垣間見える幸福な一瞬が心に残る。
『秋の牢獄』の主人公は、11月7日に閉じ込められる。何度も繰り返される11月7日。どんな1日を過ごそうとも、また11月7日になる。大学では同じ講義が始まり、友人に同じ話を聞かされる。『神家没落』はデビュー作に収録されていた『風の古道』を思い出させる異界の世界。ある青年がが迷い込んだ屋敷から出られなくなる(正確にはその敷地内から)という物語。『幻は夜に成長する』は心の奥に閉じこもる。特殊な能力を身につけたため、操り人形のような存在に祭り上げられた女性が主人公だ。
見事なホラー小説だが、ホラーの要素自体が恐怖の対象ではない。現実と異界は自然と繋がっている。現実が崩れる落差ではなく、幸福と絶望の落差で読ませる。それらをシンプルな文体で描いているのが、より寓話的な雰囲気をだしていて、遠野物語の世界観と近く思えるのかも知れない。全てが独立した物語であるのに、過去の作品も含めて同じ世界観の空気が流れているのも魅力的だ。
『夜市』が直木賞候補だったので、切れ味を増したこの作品なら直木賞を受賞してもおかしくない。
|
角川書店
恒川 光太郎(著)
発売日:2005-10-26
|
|
角川書店
恒川 光太郎(著)
発売日:2006-11
|
| Amazy | |||





