寓話的な物語が描かれた短編集。宗教色が強いものも多く収録されてれいる。イタリアの幻想文学の作家ということで少し身構えて読み始めたら、驚くほど読みやすかった。社会風刺が強いものから、人間の弱さを浮かび上がらせるような物語など。
僕が特に気に入ったのは「七階」と「神をみた犬」。「七階」は重病人ほど病室が下の階になる病院に入院することとなった男が主人公。症状が重くなったとは言われず、病院側から様々な理由を言われて、ひとつづつ下の階へと移っていく。喜劇と悲劇が入り混じり、理不尽に死への道を歩かされる恐怖はホラー小説的でもある。
表題作の「神をみた犬」もブラックジョーク的な風刺が効いた短編だ。近くの山に住んでいた聖人が亡くなった。それ以来、彼の飼っていた犬が街を徘徊するようになる。信仰心を馬鹿にしていた街の人たちが、犬の姿をみて神の使いではないかと、恐れるようになり……。
愚かな人間たちの姿は笑えるようで、笑えない。自分はこんな愚かではないと思える人なら嘲笑できるだろう。だが、共感して読もうとしても、あまりに誇張された愚かな様子に、僕はそこまで酷くはないぞと思ってしまう。この物語たちの読後感を何と表現すればいいのか言葉が見つからない。……この戸惑い気味の読後感もまた、すごく人間的だなと思う。
■気になる光文社古典新訳文庫たち
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