本屋大賞2007ノミネート作品。
30年に一度、ある特定の町に住む人々が「消滅」してしまう世界。その消滅によって大切な人を失った人たちの何人かが、「管理局」に入り次の消滅を食い止めるべく人生をかけるという物語。
世界ではなく町という部分だが有無を言わさぬ「消滅」とはまさに「終末」であり、それによって生じる「喪失」をテーマにしているので、ノミネート作品のなかでは『終末のフール』とかぶるのかと思ったが、「消滅」する側の視点が描かれることはなく(消滅する人は、消滅に「順応」して自然と消えていくという設定)、自分の大切な人が理不尽に消えていくという「喪失」を描いた物語だった。
SF小説的に、細かく設定された独自の世界を描いている。現代の日本のようだが、読み進めていくと、まったく違う世界なのわかるようになっている。「消滅」を管轄している「管理局」という特殊機関があり「検閲」行っているなど『図書館戦争』に近いところがある。登場人物はライトノベル&アニメ的で、女性の人物造形、特に男女間の恋愛感情などの描写は、僕には受け容れられないところが多くて慣れるまで苦労した。そういえば『となり町戦争』も男女間のやり取りの部分はつらかった記憶が。こっぱずかしい恋愛描写とか苦手です。
表紙はカバーを外すと町から人がいなくなるという仕掛けで素晴らしいものだが、おかげで僕のイメージした小説の内容は別のものになってしまった。『となり町戦争』で描かれた「空虚」、「シュール」、「非現実という日常」というイメージを重ねてしまい、写真集『TOKYO NOBODY』のような世界観を期待した僕が間違いだった。表紙はアニメ絵のほうがよかったのではないだろうか。
★★★☆☆
■関連図書
■誰もいない町の写真集
■『失われた町』が好きな人にお勧めの本たち
ベストセラー『黄泉がえり』は熊本の町の人々が、消滅ではなく、逆に蘇ってくることによって、失われた人たちとの関係を問い直す感動作。
個人的に好きな『アリス』は周りにいた人間60人を瞬時に意識障害に陥らせた「アリス」と呼ばれる少女。彼女は核シェルター並みの施設に隔離され、7年間研究がされていたが・・・。世界を崩壊させる力を持つアリスと研究者との戦いを描くサイエンスホラー小説。
『盗まれた街』は、気づかないうちに宇宙人が街の人と次々と入れ替わっていく恐怖を描いた侵略SFの古典的名作。






