『独白するユニバーサル横メルカトル』平山夢明/光文社 | 砂場

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平山 夢明
独白するユニバーサル横メルカトル

2006年度日本推理作家協会賞受賞作。短編集。読み手にこれほどまでに不快感、嫌悪感を与える本もそうはない。爽やかな読書がしたい人は決して読んではいけない本だ。この本は「読む悪夢」と言えるだろう。

一般的な知名度は低いが、ホラー小説ファンには有名な平山夢明。怪談実話シリーズ「怖い話」や井上雅彦監修のホラー・アンソロジーの「異形コレクション」などで有名。。この短編集のいくつかも異形コレクションに掲載されたものだ。読むものを嫌な気持ちにさせる作風はホラー小説界随一といっていいだろう。1996年の小説デビュー作の『SINKER』を発売当時に読んだ。それまでにもホラーは沢山読んでいたが、吐きそうになりながら読んだ小説はこの『SINKER』だけだ。

(ホラーが苦手な人は次からの以下は読まないことをお勧めします)

。どういった短編が収録されているかというと、まず乞食が街中の人から苛め抜かれて虐殺される話。人肉を食らう寝たきりの巨漢の男の世話をする話、様々な虐待を受ける不幸な少女が連続殺人鬼に助けを求める話、拷問する人間の精神が破綻していく話、などには生理的に受け付けない描写が多数あり、あらゆる角度からの精神的ダメージも受ける。ちなみに拷問の話のタイトルは「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」というものだ。タイトルだけで厳しいものがあるが、内容はこの1000倍ぐらい酷い。

だが、だたの悪趣味小説が賞など取るわけもなく、雑誌ダヴィンチのプラチナ本に選ばれるわけもない。これらの短編のレベルは非常に高い。デビュー作から比べると、別人のように上手くなっている。こういった悪趣味な短編の名手と言えば小林泰三だが、本書ほどの不快感はない。それよりも、筒井康隆の描く「乗越駅の刑罰」や「カンチョレ族の繁栄」のような不快な世界に近い。この本をなんとなくで読み終えることはできない。誰が読んでも生理的嫌悪感と多大な精神的ダメージをくらうだろう。なんでこんな本を読んだのか。そう思いつつも、また、僕はホラー小説を読むのだろう。

関連図書
平山 夢明
Sinker―沈むもの

お勧めできない本たち
筒井 康隆
懲戒の部屋―自選ホラー傑作集〈1〉
「乗越駅の刑罰」収録


筒井 康隆
ポルノ惑星のサルモネラ人間―自選グロテスク傑作集
「カンチョレ族の繁栄」収録


ジャック ケッチャム, Jack Ketchum, 金子 浩
隣の家の少女
今まで読んだ中で最悪な本。