『風に舞い上がるビニールシート』森絵都/文藝春秋社 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

森 絵都
風に舞いあがるビニールシート

第135回直木賞受賞作。オール読物9月号に掲載された「風に舞い上がるビニールシート」「ジェネレーションX」のみ読了。とにかく上手い書き手だなという印象。

「風に舞い上がるビニールシート」は国連難民高等弁務官事務所で事務員として働く女性が主人公だが、細かいところまで取材をして、構成もきっちりと無駄なく見本のような小説だ。男女の恋愛感情を軸にしながらも、難民問題という大きなテーマを扱い、読み手がどうとらえるか計算して書かれた内容。長編としても十分扱える内容を、短編で使っているため、展開が早い。いい意味で、ハリウッド映画のような小説だ。

僕は社会派ネタが入った小説が苦手で、短編は切れ味が鋭いほうが好きなので、収録されていた「ジェネレーションX」のほうが圧倒的に好みだ。「風に…」のほうが回想シーンなどで何年もの時間が流れているのに対しして、この短編は半日ぐらいしか時間は流れない。物語の舞台も移動しているとはいえ、ほとんど車の中。しかも半分くらいは、ひとりが携帯電話で誰かと喋っていて、運転している主人公はそれを聞いているだけ。バカバカしいけど、ちょっと考えさせられて、シミジミとほのぼのしつつ、脱力系。

森絵都は初挑戦だったが、森絵都はこの2編のイメージでいいのだろうか。うちの書店にくる出版社の営業さんが森絵都は『DIVE』がお勧めだと言っていたので、いつか読んでみようかと思う。

森 絵都
DIVE!!〈上〉

森 絵都
DIVE!!〈下〉