- ボリス ヴィアン, Boris Vian, 曽根 元吉
- 日々の泡
台所の廊下は明るく、両側はガラス戸で、どちらからも日が当たっている。コランは明るい光が好きだったからだ。そこかしこに丹念にみがきたた真鍮の栓がいくつかある。それらの栓に日光がたわむれて夢幻のような印象をかもしだす。台所にいるハツカネズミたちは日光が栓にあたる衝撃音にあわせて踊るのが好きで、光線が床にぶつかって粉々になるときにできる黄水銀の噴出のような小さな光の球のあとを追いかけていく。通りすがりにコランはハツカネズミの一匹の相手になってやる。
(本文より引用)
恋愛小説。幻想的な風景のなか、主人公は恋人を愛し、そして別れがくる。文字通りの光に満ちていた世界が、恋人の病気が重くなるにつれて、暗く狭く重苦しくなっていく。幸せの夢が悪夢へと落ちてゆく。
幻想小説は好きなジャンルなので、楽しく読めた。大きなストーリーの流れはオーソドックスなのだが、不思議な描写や世界の変化に頭のなかが「?」で一杯になる。だがここで戸惑ってはいけない。この「?」を楽しむのがボリス・ヴィアンの小説だ。深く考えすぎると先に進めなくなるので、適度に流しながら、楽しめるところは楽しむ。
僕は意味不明の夢が大好きなので、それに似た空気を持っているボリス・ヴァインの小説は好きらしい。