- 西 加奈子
- さくら
本屋大賞ノミネート作。『セカチュー』『いまあい』に続く第3弾として小学館が強烈に売り出したので、発売当初、大型書店で大展開されているのをよくみかけた。今までの純愛と違って本書のテーマは「家族」だ。
今回のノミネート作には「家族」をテーマにしたものが本書と『その日の前に』『東京タワー』『サウスバウンド』と4つもある。『魔王』も兄弟というテーマが入っているし、『告白』は家族を含めて、そこからひとつ大きくした「村社会」のなかでの孤立がテーマだ。
昨年度のノミネート作(『夜のピクニック』『明日の記憶』『家守綺譚』『袋小路の男』『チルドレン』『対岸の彼女』『犯人に告ぐ』『黄金旅風』『私が語りはじめた彼は』『そのときは彼によろしく』)と比べてもあきらかに家族を扱ったものが多い。さてそんな今回の激戦区である家族もの。
帯では僕の尊敬する脚本家の岡田恵和さんが「本棚の殿堂入りです」と評しているけど、本書の内容はどちらかというと嫁の大嫌いな野島伸司の匂いがした。
一生に一度、ちっぽけな家族に起こった奇蹟スーパースターのような存在だった兄は、ある事故に巻き込まれ、自殺した。誰もが振り向く超美形の妹は、兄の死後、内に籠もった。母も過食と飲酒に溺れた。僕も実家を離れ東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾に桜の花びらをつけていたことから「サクラ」となづけられた年老いた犬が一匹だけ ――。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、何かに衝き動かされるように、年末年始を一緒に過ごしたいとせがむ恋人を置き去りにして、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏の余白に微弱な筆圧で書かれた家出した父からの手紙が握られていた――。
たぶん著者は小説よりもドラマやマンガが好きなんだろうなという印象。「小説とはかくあるべし」という、うるさ型の本好きの人は気に入らないだろう。家族の自殺や同性愛、父親の失踪、過食症などなど沢山の深いテーマが盛り込まれているが、それらは深く描きこまれることなく安易に処理されていく。長編小説にしては全編を通してのまとまりがなく、思いつきで書いているような印象だ。エピソードごとの関連が希薄で、いちいち説得力に欠ける。
だけど一話完結ドラマのノベライズだと思えば、よくできた内容かも知れない。岡田恵和さんもそのあたりを評価したのだろうと、勝手に解釈。「スーパースターのような存在の兄」「誰もが振り向く超美形の妹」などという設定もドラマやマンガだと思えば違和感もない。テーマのまとまりのなさも、エピソードの関連性の希薄さも、それぞれで完結していると思えば読みやすい。