- 長嶋 有
- 猛スピードで母は
長らく積読状態だったが『泣かない女はいない』が面白かったので、勢いでこちらも読破。芥川賞を受賞した「猛スピードで母は」と文学界新人賞「サイドカーに犬」の2編を収録。
「サイドカーに犬」は小学校4年生の女の子が主人公。母親が家出をした。そこにやってくた父親の愛人"洋子さん"。母親代わりのようでもあり、友人のようでもある、何ともいえない距離感。ちょいワル風で男前な洋子さんの魅力が物語を引っ張る。昭和50年代の下町の匂いがする。少しけだるくて、どこか爽やか。ストーリーというよりは日常の細部を読ませる内容。
「猛スピードで母は」は無口で素直な子供と、男前な母親の物語。父親はいない。取り立て屋のような仕事をする母親は先ほどの"洋子"さんと印象がかぶる。母親は忙しく働き、鍵っ子の息子は学校でいじめられている。こちらも昭和50年代の下町の空気。僕も昭和50年代に幼少期を過ごしたので、この雰囲気は懐かしい気がする。
空気や匂いは感じるけど、音が無い。もちろん会話文は他の小説に比べて少ないわけではないし、音の描写もしている。でも全体に静かだ。それは静寂というよりは沈黙に近い気がする。沈黙があり、ポツリポツリと会話があるような印象だ。そういえば最新作『泣かない女はいない』もそうだった。だから、たまにある音の描写はリアルに耳に響く。
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