- 藤野 千夜
- ベジタブルハイツ物語
アパートの住人たちと大家さん一家が登場する連作短篇集。どこにでもいそうな平凡な人達の物語。読んでいて親近感がわく好短篇揃いだ。
取り立てて何が起こるというわけでもなく、小説だと思えばすごく地味な展開ばかりで、登場人物たちもぱっとしない平凡な人たちばかり。だけど面白い。登場人物たちが、それぞれの視点からみた時の、人物象のズレ具合がとても上手い。本人は真面目にしているつもりでも、はたから見たらバカっぽかったり。
大家さんの家では雑種で名前は「シッポナ」という犬が飼われている。大家さんの家の兄妹が帰ってくると鎖をガシャガシャ鳴らして撫でてくれと騒ぎ、その音を聞くと、それまでは悩み事をあれこれ考えていた兄妹のどちらも歓び勇んでシッポナを撫でに行く。この大家の住人になっても僕は違和感がなさそうだ。
ちなみに、このアパートは部屋ごとにA号室はアボカド、Bはブロッコロー、Cはキャロット、Dはダイコンと名前がついている。2のアボカドなら2階のA号室ということで。このあたりの脱力さ加減が読んでいて気持ちいい。