9月下旬発売の文庫 | 砂場

砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

江波戸 哲夫
部長漂流

タイトルからして某コントを思い出したが、南の島を転々とする部長の話ではなく、気合のか入ったサラリーマン小説だ。やはりタイトルが目を引くのか売れ行きがいい。会社を立ち上げようと早期退職した主人公だが、その退職当日に起業資金の半分と家族が消えるという物語。


夏石 鈴子
新解さんリターンズ

新解さんを世に知らしめた夏石鈴子が改定された第6版を熟読! 新たな変更点から、変わらなぬ言葉まで紹介。僕は傑作(?)の第4版を持っているけど、第6版でも十分に面白い! 文庫書き下ろし。新解さんファンは必携。


盛田 隆二
ニッポンの狩猟期

春日部の孤児シェルターを脱走したカズは、国道を歩き続けた。逃げ出す際、教官をナイフで刺した感触は今も手に残っていた。カズは九歳。生後まもなくトイレに捨てられたため両親のことは何も知らない。帰る家も故郷もない。カズが目指すのは、貧困と暴力とセックスにまみれた混沌の街・新宿だ。だが、そこでは腐敗した警察や自警団、新宿浄化団がのさばり、街路に溢れたストリート・チルドレンが毎日のように無造作に殺されていた。果たしてカズは生き延びることができるのか。世界の現実を見据える衝撃の近未来小説。(出版社紹介文)


1997年に発売された単行本時は『ニッポンの狩猟期2008』というタイトルで西暦2008年の設定だったが、さすがに3年後というのは近すぎたのか2008という文字は文庫化の際に外したようだ。集英社から出版されていたのだが、なぜ角川文庫?


宮本 昌孝
ふたり道三 (上)

斉藤道三は二人いた! という設定の歴史小説。奇抜は設定で戦国時代ファンなら手が伸びるところだ。成り上がりものといえば豊臣秀吉が有名だが、これは織田信長に気に入られてという所が大きい。実際に下克上のなか実力でのし上がっていたとなると斉藤道三で決まりだろう。
著者の宮本昌孝はなかなか読み応えのある歴史小説を書く作家で、これから人気がもっとでてくるであろうと思う。

柳 美里
石に泳ぐ魚

出版差し止め裁判 で有名な柳美里のデビュー小説の改訂版。実際の知人の経歴・家族構成・容姿まで書かれてあり、裁判で出版差し止めが決まったが、この改訂版の出版差し止めは棄却されたている。

……個人的にはあまり売りたくない。帯の「言葉は葬られた。しかし、精神はここに生き続ける」とは、よくこんな言葉を書けたものだと厭きれるばかりだ。



桐野 夏生
冒険の国

桐野夏生がデビュー前に書いた処女作。こういうものが出版されるのも珍しい。作家を目指す人ならデビューまでに習作やらいくつも書くと思うのだが、それがデビューしてから出版されるなど、他の人気作家でもあまり見たことがない。よほど出来がいいのだろうか。