
- 著者: ジェローム・K.ジェローム, 丸谷 才一
- タイトル: ボートの三人男
イギリスのユーモア小説の古典的名作。サブタイトルに「犬は勘定に入れません」とある。昨年度の「このミス海外編」9位にランクインしたコニー・ウィルス『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』が読みたいと思ったが、この小説の本歌取りらしく、こちらを先に読了。
ユーモア小説ということで、分かりやすい「ずっこけ3人組みの珍道中」だ。3人の英国紳士がテムズ河をボートで漕いでいくのだが、3人ともボケ役なので収拾がつかない。荷造りするだけで大騒動で、当然のごとく3人とも朝は寝坊するし、もちろん出発地点へ向かう電車にだってまともに乗れない。こうなると勘定に入っていない犬のモンモラシーにシニカルな突っ込み役を期待したいところだが、困ったことに飼い主に似たのか、見事なバカ犬だ。
一体ぼくは、いつも働くべき分量以上に多く働いているような気がする。誤解しないでほしいが、僕は仕事が嫌いだという訳ではない。ぼくは仕事が大好きだ。何時間も坐りこんで、仕事を眺めていることができる位なのだ。(中略)
ぼくはいくら仕事が多くても平気なのである。仕事を溜めておくことは、ぼくにとって、ほとんど情熱のようなものになっている。今では、ぼくの書斎は仕事が一杯になって、もうこれ以上仕事を置いておく余地がないくらいだ。もうじき建て増ししなければならないと思っている。(中略)
ぼくは自分の仕事に誇りをもっている。ときどき仕事をとりだしてハタキをかけてみるくらいだ。仕事の保存状態がぼくよりもよい人は、あまりいないだろう。
ずっとこんな調子だが、実はこの小説、テムズ河の歴史的地理的な観光案内を目的として書き始められたらしい。そういえば土地ごとの歴史的な出来事を説明している箇所がやけに細かいなと思った。前知識のない僕にはさっぱり理解できず、そのあたりは読んでいてつらかった。だが、主人公がそうして流れゆく景色を眺めながら過去の歴史に思いを馳せたり、詩人の面持ちで美しい夕日に陶酔していると、当然のごとく、ボートは岸に突っ込んでいくのである。