『第3回 このミステリーがすごい大賞』 | 砂場

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本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

今回は大賞が2作品ってことは、文学賞では国内最大級の賞金1200万円×2名。2400万円とは宝島社思い切った! 第1回受賞の『四日間の奇跡』が80万部売れていて映画化決定だけのことはある。

ちなみに、この賞は「小説を書く専門家」である作家先生ではなく「小説を読む専門家」の書評家が選ぶという、珍しい文学賞。減点方式で無難な作品が残るのを嫌い、多少問題があっても受賞後に書き直してもらうということで「ダイヤの原石」を見つけ出す方針。



著者: 水原 秀策
タイトル: サウスポー・キラー

候補作時点では「スロー・カーブ」という見事な直球タイトルの野球ミステリー小説。オーソドックスな手法で書かれて変に捻っていないので読みやすく、好感度の高い主人公というのが魅力的だ。

野球を題材にしているだけに、細部をおざなりにすると野球ファンの怒りを買うが、このあたりは「書き直し前提」なので修正しやすいところ。人気プロ野球チーム(冒頭を読んだが、どう見ても巨人です)で活躍する孤高の頭脳派ピッチャーが陰謀に巻き込まれるというストーリー。

この孤高の頭脳派ピッチャーという設定が僕の大好きな元ロッテ小宮山を思い起こさせるので、僕としてはかなり気になるところ。普段、あまり小説を読まない人たちも入りやすそうな設定なので、ベストセラーになれるかな。



著者: 深町 秋生
タイトル: 果てしなき渇き

こちらは文章力が評価されたとあって、小説にうるさい人もにも耐えうる作品。選考委員で、現在、僕が最も信頼する書評家の大森望氏が最高点をつけたとあって、期待大。

「失踪した娘を捜し求めるうちに、徐々に“闇の奥”へと遡行していく父。娘は一体どんな人間なのか――。ひとりの少女をめぐる、男たちの狂気の物語。その果てには……。」帯の紹介文

ハードボイルド&ノワール小説が好きな人なら読んでおきたいところ。重いストーリーなので読者を選ぶと思うが、このジャンルにすれば比較的オーソドックスに書かれているようなので、入門書としてもいいかも知れない。社会の暗部や人間のエゴ、心の闇を徹底して描き切るノワール小説は、娯楽としての読書としては適していない。あきらかに苦痛を伴う読書になるのだが、それだけに他にはないカタルシスを味わえる。