お山の妄想のお話です。
「ねーねー、ちょっと訊いてもいい?」
楽屋で新聞を読んでいると雅紀が寄ってきた
「ん?なんだ?」
番組の収録についてかと思い顔を上げると目
の前にはにやけた顔がある。
それを見て、これは真面目な話じゃないと直
感した。
「あのね、翔ちゃんと大ちゃんってさ夜の運
動の役割りどうやって決めたの?」
夜の運動?ああ、そっちか…
ほら、やっぱり録な質問じゃない。
答える気も失せて再び紙面に目線を戻す。
「ちょっとぉ!シカトしないでよ~。あっ、
そっか、恥ずかしいんだ!じゃーオレと和ち
ゃんのことを先に話すよ!だから翔ちゃんも
教えてね!」
勘違いも甚だしいとはこのこと、俺は返事も
していないのに雅紀はペラペラ話し出した。
「オレたちは何の問題もなくスムーズに担当
が決まったよ!って言うか、お互い役割りが
わかってたの。まー和ちゃんは面倒臭がりだ
からネコちゃんを選んだのかな~。
オレは尽くしたい方だからトロトロになる程
気持ち良くさせてあげたかったしWin-Win
だったんだー」
確かにニノはアレコレ面倒な事をするより、
ただ寝ていて気持ち良い方を選ぶだろう。
「翔ちゃんたちはどう決めたの?どっちが
ネコちゃんなのかは知ってるけど、どうやっ
て決めたのかずーっと疑問だったの。
だってさ、ああ見えても大ちゃん男らしいし
翔ちゃんは乙女なトコあるじゃん?
どっちもネコちゃんになる可能性はあった訳
だし~。ね?どうやって決めたの?」
「それを聞いてどうするんだ?お前には全然
関係ねーだろ」
智君との閨事をこいつに話す必要もないので
バッサリと切って捨てたが、雅紀はそれが通
じる相手ではなかった。
「関係はないけどさー、知りたいんだもん。
友達のそういうのって興味あるじゃん!
ねー、教えてよぅ!オレと和ちゃんみたいに
自然な流れだったの?まさか必殺のじゃん拳
じゃないよね??」
必殺のじゃん拳、とは多分昔先輩の前でリー
ダーを決めた時の事を指している。
あの時俺はじゃん拳に負けたが咄嗟に智君の
手を握って持ち上げ勝者=リーダーという流
れにした。
夜の方もその決め方だったと言いたいのか?
大切な事をそんな風にするはずないだろ。
「じゃん拳なんかで決めてねーし!お前に話
すことでもねーだろ。二度と変なことを訊く
なよ!」
この話題を終わらせたくて強く戒めた。
諦めるだろうと思ったが無駄に終わる…
「何で怒るの~?翔ちゃんの怒りん坊!
もういいよ、大ちゃんに訊くから!!」
「はぁ?!智君に訊くだと!ちょっ、待て」
口を尖らせ楽屋を出ようとするのを慌てて止
めた。
だってそれはマズい、智君にあの時の事を思
い出さないでいて欲しいから。
「何でだよー、翔ちゃんが答えてくんないな
ら大ちゃんに訊くしかないでしょ!」
「あの人に変なことを訊くんじゃねー!!」
「別にいいじゃん!オレだって和ちゃんとの
こと話すし!フェアでしょ!」
「問題はそこじゃないんだ!どうしてプライ
ベートを知りたがるんだよ、親しい間柄でも
礼儀があるだろ!」
「だって興味があるんだもん!女の子が相手
なら問題ないけど、男同士ならどう決めるの
か他のカップルも知りたいじゃん!」
雅紀は真剣に言い放った。
なぜコイツはどうでもいいことに食い付くのか……統計でもとるつもりか?
しかしこうなった雅紀は結構面倒だ、納得が
いくまでしぶとく粘る…
あの時の事は話したくない、けど智君に尋ね
られるのも嫌だ。
だって語彙の少ない智君と自分流の解釈しか
しないアンポンタンの雅紀だと真実が伝わら
ないから……
そうなればあの時の情けない俺の言動が更に
悪化しズレが酷くなる恐れがある。
はぐらかせないなら、語るしかないか……
仕方がない…
俺は諦めて大きく息を吐き、雅紀に誰にも言
うなと念を押した。
「絶対に他言するなよ。絶対だからな!
お前が言う夜の運動については大きな課題だ
った、お互い攻めを譲る気はなかったんだ。
智君は『歳上だし、器用だから』と主張し、
俺は『身体が大きいし色々調べて知識もある
からお互い気持ち良くできる』とアピールし
た。でも智君は『知識があっても不器用じ
ゃん』とか言って引いてくれなかった。
あんなに思いやりのある人がだよ…意思の
固さを感じたよ」
「え~、マジで?!大ちゃんって大体相手の
良いようにしてくれるのに?!」
「だろ?!でもその時ばかりは駄目だった。
だからと言って俺も折れるのは無理、どうし
ても俺の手腕で蕩けていく智君が見たかった
からな」
「だよね~、やっぱ男として大好きな人をト
ロトロにしたいもんね。で、結局どうなった
の?」
「お互いに譲らない夜が続き、いたせぬまま
幾晩も過ぎた。どちらも折れないから綺麗な
身体のまま…でも夜中に二人でいるから欲求
不満になっちゃって、せめてお互いのをヌこ
うってことになったんだ」
「ヌきっこかぁw初歩的だね〜可愛い」
「そこで閃いた、俺のテクニックで智君を超
気持ち良くさせてその勢いで攻めを勝ち取ろ
うと!」
「ふぇ~、自信があったんだね」
「当然だ。でも同時にやると俺も気持ちよく
なっちゃって失敗しそうだから別々にして、
先に智君に慰めてもらったんだ。まずは相手
の力量を見定めなきゃならないし」
「先に大ちゃんにしてもらったんだね、どう
だった?」
「無茶苦茶良かった……物を作る人だから器
用で、滑らかな指の動きで…」
「まさか呆気なく昇天?」
「バカにすんな、ウルトラマンのカラータイ
マーが点滅するくらいは持ちこたえたさ」
「え~、それって3分でしょ?微妙…」
「ナメんな、お前なら2分ももたねーよ。
それほど匠の技なんだから」
「マジで?一回お願いしてみよっかな…」
「ふはは、俺とニノで血の晩餐会開催だな。
勿論食材はお前で」
「………ごめんなさい…冗談デス…」
制裁を仄めかすと恐ろしさからか萎びたので
話を進める。
「智君の実力を知り、次は俺の番。指先の魔
術師の本領を発揮したんだ。気合いを入れた
妙技に智君のさとしくんはどんどん育ち、本
体の方もトロトロに蕩けた…」
「指先の魔術師ってのは納得いかないけど、
それで攻めを勝ち取ったんだね!」
「………いや。トロトロにはなったが爆発に
は時間がかかった……」
「あ~やっぱりね。不器用な翔ちゃんが指先
の魔術師だなんてありえないもんw結局負け
たんでしょ?なのにどうして攻めになれたの?」
「そ、それは……」
ここからは己のことだがかなり情けない…
出来ることなら話したくないが、そうもいか
ないだろう。
「ねーねーどーして??そこが聞きたかった
んだよ?」
雅紀が急かしてグイグイと寄ってくる。
ウザい、うるさい、仕方無い……
結構話を盛ってしまった分真相は哀れだ。
変に誤解されないように話さなきゃ…
「………頼んだ…泣いて…」
「んん??なに?聞こえないよ??」
「頼んだんだよ!受けだけは勘弁してくれっ
て…」
「へっ?攻めを勝ち取った話じゃないの?」
「…調子に乗りすぎた。すまない語弊があ
った。実際は泣きながら直訴したんだ」
「マジ泣きで??どーしてさ?」
「……だって智君のモノって凄く大きいん
だもの、アレを入れられたら切れ痔街道まっ
しぐら仕事に支障が出るレベル…」
「大ちゃんのって泣くほど立派なのぉ!?」
「うん、あの細い身体から想像できないくら
いの」
「マジで?!見たい!拝みたい!」
「馬鹿め!あれは俺だけの宝物だぞ!お前に
なんか拝観させねーわ!」
「なんだよ、ケチんぼ!拝観料弾むのに」
「ケチで結構!お前こそ今の発言をニノが聞
いたら酷い目に遭わされるぞ。市中引き回し
の上 、磔獄門だ」
「シチュー??なにそれ??」
「あ~、もういいや…兎に角、智君は俺を
憐れんで受けになってくれたんだ。全てあの
人の優しさで成り立ってる。これが俺たちの
役割りの経緯だ。これで満足だろ」
「う~ん…思ってたのと全然違うし、なん
か翔ちゃん根性なくね?ヘナチョコだ」
「正にしりの穴が小さいってか、ほっとけ」
「小さくて掘れないから攻めなんでしょw」
「 怒 」
上手いこと言ったとしたり顔の雅紀に一先ず
鉄槌を下しておいた。
***
「ねー大ちゃんさ、もしかしてモンスター級
の大きさだから怪物くんの主演になったのかな?」
「はあ?!」
「怪物くん改め怪ブツくん、とかww」
「んなわけあるかっ!!」
落ちココ
読んで後悔したよねーw