お山の妄想のお話です。






智の肩を掴み身体を反転させ、そのままうつ

伏せに倒した。

そして間髪を入れず背に跨がり寝間着を腕に

巻き付けるように縛り上げる。


「何すんだよっ!」


怒りの形相で智が叫ぶ、だが組敷かれ動けな

い状態では引かれ者の小唄のようなもの。

何の脅威もないそれを無視して下着を引き下

ろすと白くふっくらとした臀が現れた。


「バカヤロー!よせっっ!」


俺の意図を察した智は足をバタつかせ抵抗す

る、それを股に身体を入れ込むことで排し双

丘を掴み押し広げた。


煌々とした明かりの下、秘部が露になる。

そこは硬く閉じ何の侵入も受けていないこと

は明白でホッと息が漏れる。


「あんたの言う事を疑ったわけじゃないけど

この目で見るまでは安心出来なかった…」

「ふざけんな!こんな事をして只じゃ置かね

ぇぞ!」


こんな状況なのに強情を張る智に、俺の中で

意地の悪い感情が芽生えた。


「どうするのさ?こんな状態で何が出来る?

やれるものならやってみろよ」

「ぐっ!!」


冷ややかに言い返すと智は悔しそうに顔を歪

めた。それを見て少しだけ気分が晴れたが、

まだ許すわけにはいかない。


「あんた現役の時、上品(じょうぼん)の肛門

って言われて大層な人気だったよな。

たしかそれは、尻の肉付きが良く肌はふっく

らとしてきめ細やか、肛門は柔軟で42の襞が

あるってことだけど。本当に襞は42なのか?

そういえば今まで数えた事がないな、折角だ

から数えてみようか?」

「ばっ!馬鹿!やめろっ!」

「どうしてさ?実際に数えた奴だっていたん

じゃないの?そいつは良くて俺は駄目ってこ

とか?」

「駄目に決まってるだろ!」

「何故だよ」

「お前は……翔は客じゃねぇだろっ!」

「そうだな、なら客になって金を払えばいい

のか?」

「ちっ、違う!そうじゃねぇ!」

「じゃあ、俺はあんたの何なんだ?言ってみ

ろよ、囲い主か?飼い主か?」


蔑むように言うと智は傷付いた顔をした。

言い過ぎたと思ったが後の祭りだし、ここで

俺達の関係をはっきり言わせたかった。


「なんでそんな酷ぇこと言うんだよ……お前

はずっとそんな風に思ってたのか?」

「俺の想いは違う、ただ智がどう思っている

のかを聞きたいんだ」

「おいらと……おいらと翔は情人だ、好き合

っている者同士だろ!」


智から満点の答えを聞けて嬉しい。

俺達は相思相愛なんだ、だからこそ心情を汲

んで欲しい。


「そうだな、恋人同士だ。だったら分かるだ

ろ?仕事だとしても愛する人が別の奴とする

のがどれ程嫌で辛いことか。俺は身請け前、

ずっとそんな思いに苛まれていたんだ。あん

たが誰かに抱かれていると思うと気が狂いそ

うだった、それを堪えてやっと俺だけのもの

に出来たのに……どうしてまたこんな酷い仕打

ちをするんだよ」


まだ若く愛する人を助けることが出来なかっ

たあの頃、我が身の不甲斐なさにどれだけ悔

しい思いをしたか、それをこの人も知ってい

るはずなのに……


「……すまない、悪かったよ。お前を傷付け

るつもりはなかった。でも……」

「それでも指南役をするつもりなのか?」

「だって…和と約束した…これから陰間とい

う辛い生活が始まるのに、おいらが裏切るよ

うなこと出来ねえよ。可哀想だ…」

「……俺は可哀想じゃないのか?あんたは俺よ

りあの子供が大切なのかよ!」

「そんなわけねぇだろ…お前の方が大事だ」

「だったら止めてくれ…」


尻から手を放し背中から華奢な身体を抱きし

め懇願した。俺の気持ちを理解してくれたな

ら指南役を降りてくれると思っていた。


「………なぁ、おいらは翔が誰よりも好きで大

切だよ。だけど約束を違える事は出来ねぇ、

仕事だと割り切って許してくれよ」


けれど頑固なこの人は折れようとしない、

それならば仕方がない……


「………わかった。しかし本当に割り切って出

来るものなのか確かめる必要がある、だから

その訓練というやつをあんたの身体で試させ

てくれ」

「えっ?!」

「どんな事をするのか知らなければ承知でき

ないし」

「…本気で言ってるのか?」

「当然だ。嫌だというなら問答無用であの子

供は置屋へ送る」


惚れた弱みか…

本当は嫌だが一度だけなら許してもいい。

だが指南とはどんな事をするのかを知り、そ

れで本当に劣情に囚われないか確認する必要

がある。


「どうする?」


黙り込む顔に問い掛けると、智は目を伏せて

暫く考え込んだ後にコクリと頷いた。


「わかった。それでお前が納得するなら…」

「では、最初の段階から話してくれ」

「……最初は……小指を…少しずつ慣らしなが

ら入れるんだ」

「小指を穴に?」

「そう、細い指から入れて徐々に太いものへ

と進めていく…」


智は顔を隠すように布団に押し付けているの

で声がくぐもる。

表情は見えないけれど、髪の間から覗く耳が

赤く染まっているので恥じ入っているのだろ

う。


普段見せない稀有な姿に胸が高鳴る、ここ暫

くお目にかかれなかった可愛らしさだ。

まるで初めての時のように興奮しながらそこ

に小指をあてがおうとして思い至った。


潤いもないまま入れようとすれば、硬く萎め

るそこを傷付けてしまうだろう。

危うく大切な人に痛みを与えてしまうところ

だった……


気を落ち着かせ普段のようにサイドチェスト

からローションを取り出し指にからめる。

そして小指をそっと蕾に押し当てた。


「……始めるぞ」

「おう……」


指の先から少しずつ智の中に入れ込むと慣れ

た身体は抵抗無く飲み込んでいく。

根元まで入れると次は抜き差しだと指示され

それが終わると次の指へと変わり同じ事を繰

り返す。


陰間の修行ではこれを何日も掛けて行うらし

い、智のように受け入れることに慣れている

身体なら容易だろうが経験の無い少年には酷

だろう。

これをしてみて、近くに置き情の移ったあの

少年に辛い思いをさせたくないと言った智の

気持ちが少しわかった気がした。


小指から始まり親指まで終わると、次は中指

と人差し指の2本を同時に出し入れして太さ

に慣らしていく。

既に快楽に慣れた智には指程度ではもどかし

いようで、もっと刺激をくれとせがむように

腰を揺らめかした。


そんな淫靡な姿を前に、すぐにでも自分を挿

れてしまいたかったがグッと我慢する。

なぜならこれは『指南とはどのような事か』

を知るための行為、だからこそ智も許可して

いるのだから。


「これで指は終わりだろ?次は?」


次は何をするのか尋ねると、荒い呼吸の合間

に『それ…チェストの上の…』と答えがあり、

そこに視線を向けると何かが置いてあるのが

確認できた。

それは棒に綿を巻き付けてあるだけの物で用

途はわからない。


「何だこれ?どう使うんだ?」

「それは棒薬……指の次はそれを入れる…」

「これを?」

「そう…でもそこにあるのは見本だ」

「見本?」

「和に訓練の順序を教えるために用意した」


棒薬とは7センチ程の木の棒に綿を巻き本物

の男のモノと同じ太さにした物で、それを寝

る時に挿入し就寝時はずっと入れたままにし

て異物感に慣れさせるものらしい。


「本当に入れる時は液を塗るけど…それは見

せるための物だから」

「今は使えないのか?」

「……ああ」

「じゃあ今日の試しはここまでだな」

「えっ?!」


そう言うと智は焦った様に振り返った。


「だって指南の過程を確認しているんだぞ?

飛ばして次、と言うわけにはいかない」

「で、でもそれは和には必要だけど慣れたお

いらにはいらねぇし省いていいだろ」

「どういうことだよ?」

「棒薬の次に進むってことだ」

「次って?」

「そりゃぁ、お前の……」


さっきから物足りなさそうにもじもじしてい

るから、強い刺激が欲しいのだろう。

訓練だと言って奥まで突かれるのを期待して

いるように感じた。


「俺の何を?どうして欲しいの?」


意地悪く訊くと、言い難いのか視線を彷徨わ

せる。


「言わなきゃわからないぞ?棒薬とやらが使

えないなら今日はもう中断するか?」

「中断?」

「そうだ、指南内容の確認は終了として俺は

家に戻る」

「待てよ、おいらをこの状態のまま放って帰

るつもりか?」

「そういうことになるな。でもこの後どうし

て欲しいのかをハッキリと言えば考えてやっ

てもいい」


どうする?と目で問うと智は悔し気に唇を噛

み、その後意を決したように口を開いた。


「指南の確認は終わりでいい。今からは恋人

同士の時間にしてくれよ」

「恋人の時間?なに?」


智の望みはわかっているけれど俺は素知らぬ

ふりをした。それを言わせたかったから。


「だから……続きを…」

「続き?」

「わかってんだろっ!」

「わかんない、言えよ」

「っつ、くそっ!言えばいいんだなっ!」

「うん?」

「お前の、翔ので突いてくれ!おいらを愛し

てくれよ」


その言葉を聞いた途端、口の端が上がるのが

自分でわかった。端から見たら今の俺は満足

気に笑っているだろう。


「挿れていいの?あんたを目茶苦茶にするか

もしれないぞ?」

「お前になら何をされてもいい…好きだから」

「智……」


智が俺達の関係を肯定してくれ、蟠りが一つ

減った。


「おいらを感じさせ満たしてくれるのは翔だけ……今まで抱かれた客にはそんなの感じた

ことねぇよ」

「当たり前だ、俺は智を心から愛してる…

智も同じだから他の誰よりも感じるんだよ」

「うん……おいらには翔だけだ。翔さえいれば

他はいらねぇ」

「俺もそう、智だけだ…」


お互いの心と身体が一つになった時、かけが

えのないものが何なのかを知る事が出来る。

今回の事で俺の想いは完全に智に伝わり、智

の気持ちも然りだ。


俺はこれで疑心暗鬼に囚われることなく、最

愛の人を信じきれる……

あの少年と智の関係を疑ったり妬むことも無

くなるだろう。


「智……あんたの全てを感じたい」

「うん、全部やる…だから翔もくれよ」

「ずっと前から俺はあんたのものだよ…」

「ふふ、そうだな」


嬉しそうに笑う智の姿に慈愛が溢れ、ずっと

辛そうにしていた腕の寝間着を外して自由に

してやった。


「ありがとうよ、腕痛かったんだ」


俺が無理矢理縛ったのに責めずに礼を言うな

んて、本当に智は性格が良い。

それに比べ自分はとても狭量だ……


「ごめん…」

「いいよ、気にすんな。そもそもおいらが翔

を怒らせたから悪いんだし」

「……智」


愛おしくて抱き締めると智も俺の背に腕を回

す、そして耳元で囁いた。


「……おいら、そろそろ限界」


俺はそんな智の唇を激しく吸いながら、美し

い身体に覆いかぶさった。






To  be  continued





これ、大丈夫?

わしの頭も大丈夫?