お山の妄想のお話です。
尻尾をつける……
そう言ってしまったが、それは予想していた
より遥かに難しいものだった。
だって尻の孔に入れるんだぜ?
しかも手に取って分かったけど、中に入る部
分が意外とデカイんだ。
俺の菊座は幼少の頃に座薬や浣腸くらいしか
入れた事がない、殆どバックバージン。
だからいきなりデカイバ○ブなんて入る訳が
ないんだ。
どうしよう……
今さら『やっぱり無理でした。テヘッ』なん
て言えない。
尻尾を楽しみにしている智君をがっかりさせ
る訳にはいかないし、謎の負けず嫌いが出て
『絶対に尾っぽをつけてやる!』なんて思つ
てしまっていたから。
バ○ブを見つめ暫し思案した結果、解して柔
らかくして入れるしかないと結論が出た。
では、どうやって解すか?
そんなの指を突っ込むしかないだろう……
愛する人にやるのは至福だが、自分にするの
は地獄だ。
しかしやらねばならない!
智君に嘘は吐きたくないし、ここで男気を見
せないと『へたれ』と愛想を尽かされる…
取りあえず入れてみるか、と指を当てたが
そこでふと思ってしまった。
う○こ大丈夫??
快便で今日の分は出した後だが、入れた後指
にナニがついていたら最悪だろう。
…………まず、シャワーで洗っておこう。
やり方を調べたら『シャワ浣』と言うものが
あった。シャワーヘッドを外し直接穴に水を
入れ中のモノを出す、というものだ。
上手く出来るかは定かでないが、俺は服を脱
ぎ風呂場へと入った。
*
「よしっ!やるぞ!」
ついでにシャワーで体を洗いながら己に喝を
入れる。
躊躇していても始まらない、サクサクやって
智君に可愛がってもらうんだ(猫としてな!)
シャワ浣を数回繰り返し中がキレイになった
頃、思い切って指を一本入れてみた。
「うっ…」
………キツイ、そして痛え…
いや、これ絶対に無理じゃね?
指一本でこれだぞ?あんなデカイの無理だろ
バ○ブの大きさを思い出し、つい弱気になっ
たが『ニャンコ可愛い♡』と喜ぶ顔を想像し
ながら気合いを入れて事を進めた。
一本、二本、さ……三本……
とうとう三本にまで行き着いた…
智君にする時には興奮MAXな行為も己にやる
のは情けない限り。
俺は何をしてるんだろう…
本当にこれでいいのか?智君を喜ばせるには
別の事があるだろ?
果たして本当に智君は俺が尻尾をつけるのを
期待してるのか?
自問自答の後、疑心暗鬼になりかけた時、風
呂の戸の向こう側から声がした。
「翔くん、随分長風呂だけど大丈夫?」
どうやら愛しい人は俺を心配して様子を見に
来たようだ。
「だ、大丈夫だよ」
「ホントに?風呂で何やってんだ?」
「う、あの…」
「なに?」
「尻尾をつけるために、解してる…」
「ほぐす?ドコを?」
「孔に決まってんだろ!」
あんた、まさか使用方法も知らんであんな物
を買ったんか!?と鋭くツッコミを入れた。
「んん?そっか、あれケツに入れるんだな」
「そうだよ!だから苦労してるんだろ!」
「苦労?」
「だって俺…後ろに入れたことないし…」
「あっ!そうか!翔くんお初なんだな」
智君は合点がいったようだ。
そして暫く考えてから、済まなそうに言った
「初めてなのに無理言ってごめんな」
無理って…難題を課したのに気が付いた?
俺はそれを聞き、もしかしたら『もうシッポ
はいいよ」と言ってくれるかもと期待した。
優しい智君ならそう言うはずだし。
しかしその期待は見事に外れ、更に悪い方向
へといってしまう。
「おいらが解してやるよ」
「へっ?!」
「何時も翔くんにしてもらってるだろ、だか
らお返しにやってやるよ。自分でも解してる
からやり方もわかってるし、安心しろ」
「 !!!!! 」
何故そうなる!
智君にしてもらうなんて、そんな危険なこと
出来るわけ無いだろ!!
良い具合に解されてそのままヤられる可能性
たって否めない。
「全身全霊で断る!!」
「え~っ、善意なのに~」
「善意なのはわかってます、だが断る!」
「じゃーどーするの?尻尾つけないの?」
尻尾をつけなければ智君に甘えられない。
このチャンスを逃せば、また塩対応の日々が
待っている…
それはしょうがないけど、生きていく上では
少しでも旨みが必要なんだ。
「尻尾は自力でつけるから!ちょっと待っ
ていて!!」
「ちぇ~っ」
智君を追い払った後、意地で孔を解した。
そして風呂から出て覚悟を決め尻尾の先を突
っ込んだ。
「んんっ!!」
苦肉の策で途中からローションを使ったせい
か解したそこになんとか入れることに成功し
たが、半端ない圧迫感に襲われる。
それを堪え根性で猫アイテムとTシャツ、そ
れにトランクス(尻への負担が少しでも減るよ
うに)を履き、へっぴり腰で智君のいるリビン
グへと向かった。
「しゃ、しゃとしくん……」
リビングに入り名を呼ぶとソファーに座る智
君が振り返り、俺の姿を見て顔を輝かせた。
「わっ!翔にゃん!可愛い!」
三十路を過ぎた男の猫耳や尻尾が可愛いかは
甚だ疑問だが、愛しい人が喜んでくれたなら
満足だ。
「翔にゃん、おいで~」
いまだかってない程の優しい声、そして大好
きなフニャっとした笑顔付きで両腕を広げる
智君……
そんな風にされたら猪のように猛進したい…
しかし、残念ながら今の俺の体では不可能だ
腹への圧迫と異物感が半端なく歩くのに支障
をきたしているんだから。
「ほら、早くおいで~」
愛らしい笑顔で呼ばれると、早く早くと気は
焦るが如何せん身体が言うことをきかない。
それでも不撓不屈の精神で後ろに振動を与え
ないように股を擦り合わせながら歩いた。
端から見たら超スローモーションで、人によ
ってはイライラして怒りだすかもしれない。
しかし智君はそんな俺を見守るように、慈愛
の笑顔で両腕を広げ続ける。
辛抱強く待つ愛しい人に応えるため、俺は気
力を振り絞り進む。
そしてやっとソファーに辿り着き智君の膝に
倒れ込んだ。
「よしよし、頑張ったね~」
労るように頭を優しく撫でられ、ホッと力が
抜けた途端に自分の姿を思い出し目茶苦茶恥
ずかしくなり智君の腹に両手を回して抱きつ
いた。
「んふ♡可愛いお顔を見せて」
聞こえた言葉と顔を上げさせようとする動作
に更に羞恥心が増し、腕に力を入れて智君の
腹に顔を埋める。
「見られるのイヤなんか?」
無言で何回も頷くと『そっか』と直ぐに止め
また優しく頭を撫で始めた。
なでり、なでり、なでり、なでり……
何度も頭から背中、腰辺りまで撫でられて努
力が報われた気分だ。
気持ちが良くてうっとりと『ああ、ずっとこ
うしていたい♡』なんて考えていたら、突然
智君は俺の腰をトントンと叩き始めた。
「うぎゃっ!!!!」
いきなりの刺激にそれまで忘れていた異物感
が甦り叫んでしまう。
「うおっ!ビックリした!」
叫びに驚いた智君の腕を掴み、必死に動きを
止めた。だってこれ以上尻に刺激をあたえた
くないから。
「あんた何つーことするんだよ!!」
「何って…腰トントン?猫は腰をトントンさ
れると喜ぶんだぜ?猫カフェで教えてもらっ
たじゃん」
「…確かにそうだけど、今は止めて!」
「何でたよ?おめえ今は猫だろ?」
「猫だけど、人間だし!」
「意味わからんけど、わかった」
「もうトントンしないでよ!」
その言葉を信じて手を離したのに、あろうこ
とか今度は尻尾を握ってきた。
「うぎゃぁあああ!!!」
それによりブツの角度が変わり中が刺激され
て、俺は大パニックだ。
「や、やめれっ!!」
もう一度智君の腕を掴んだ。
「トントンしてないのにどうして駄目なんだ
よ」
力いっぱい掴んだからかそれとも不服だから
か、智君は顔を歪める。
「トントンよりたちが悪いわっ!尻尾を握っ
ちゃ駄目だろ!!」
「あ、ごめん」
謝ったので手を離すかと思いきや、より生え
際(ブツの)を握りなおしてきた。
俺は悲鳴を噛み殺し智君の腕を払いのけ、身
体を起こしてソファーの端まで逃げた。
「あ、あ、あ、あんた、なにして…」
「ん?ニャンコは尻尾の付け根触られるのも
好きなんだそ?だから」
「だからじゃねー!」
「何で怒るんだよ~気持ち良くしてあげてる
のに」
「はあ?!何言ってんだ!」
「猫の尻尾の付け根にある仙骨の中を脊髄が
通っており、脊髄から別れた神経のうちのひ
とつが生殖器と繋がっています。そのため尻
尾の付け根を刺激されることにより気持ちい
いという感覚を生んでいます。ってグーグル
さんが言ってるから実践したんだよ」
スマホ画面を俺に向け少し横柄に言う。
そりゃ、本物の猫なら喜ぶだろうけど俺は人
間だ。今の俺には迷惑?いや災難でしかない
「俺は人間だから気持ち良くなんてない!」
「………嘘つき」
快感を否定する俺を智君は半笑いで見てい
る、何が嘘なんだと憤るとつっと俺に指を向
けた。
指が指し示す場所に視線を向けるとそこは股
間で、なんということでしょうトランクスの
前面が膨れているではありませんか!
匠もビックリなまさかの事態に俺は慌てて両
手でそれを隠した。
「翔くん、それが勃ってたら気持ち良くない
なんて嘘は通用しねえよ」
確かにそうだが、これは中を刺激され生じた
現象であり決して快楽で得たものじゃない。
しかし実際に元気になっている手前言い逃れ
は出来そうになかった。
「気持ち良かったって認めろよ?そうしたら
おいらがもっと善くしてやるから。これは翔
くんが新たな世界の扉を開けるチャンスなん
だぞ」
智君の優しい笑顔に凍りつく。
深読みかもしれないが、ここまでの一連は全
て計算尽くだったのではないだろうか?
『猫になりたい失言事件』のリベンジか
はたまた俺が犬のように嘗め尽くしたことへ
の報復か……
愛しい人をこんなにも恐ろしく感じた事はな
かった。
「翔くんの準備も万全だし、丁度良い機会じ
ゃん。だから…」
ソファーの上を這いじわじわと近付いてくる
智君……
そのしなやかな動きは、まるで獲物を狙う美
しき黒豹。
こんな状況じゃなかったら感嘆の溜め息をも
らすだろう。
しかし今の俺は彼の『獲物』恐怖におののい
き身動きできないでいた。
ジリッ…ジリッ…
とうとう智君が直ぐ側まで来てしまった。
その腕が俺へと伸ばされる…
捕まったらどうなるの?
やっぱり食べられるよね?
俺は智君によって、新たな世界の扉を無理矢
理こじ開けられてしまうのか?!
……嫌だ!絶対に嫌!
その時突如として自己防衛の本能が働いた。
近付いた智君の胸を押し倒すと、着けていた
猫耳やグローブを取り払う。
そして尻尾も引き抜き遠くへ投げると、仰向
けに倒れている智君に乗り上げた。
「俺は禁断の扉なんか開ける気はない!」
「ええっ!ちょっと待って!どけ!」
「絶対に退かん!ニャンコごっこは止めた!
俺はワンコでいい!!」
やっぱり俺は猫にもネコにもなれない。
愛する人をベロベロと嘗め回す犬でいい
さあ、これからこの可愛いKittyを思う存分嘗
め回そう。
「えっ?!おまえ、何言って……」
突然の形勢逆転に戸惑う智君をそのままカブ
リと頂きました♡
それまでの鬱憤が溜まっていたから行為は結
構激しくなって、もはやワンコではなく狼だ
ったけどね。
取り敢えず終了
本当に書きたかったヤツは
いつか限定で。
力尽きた…
祝猫の日